本研究では,簡易電動車いすに装着した1輪のアクティブキャスタを推進機構とする5輪構成の車いすの設計と制御につき研究を行った.路面の状況に応じて駆動輪と車いすの相対的な位置/高さを変更し,安全で快適な操作性と高い段差踏破性能を有するロボット車いすシステムを開発した.あわせて,車いすの折り畳み構造に対応したリンク構造と小型車輪機構を開発した. アクティブキャスタと車いすの相対的な位置/高さを変更するための直動アクチュエータを備えたリンク機構を提案し,段差昇降アルゴリズムを検討した.特に,車輪機構を車いす後方に離すことで,車いすの前輪を静的に床面から浮かせる静的ウィリーと呼ぶ独自の動作方式を提案した.これにより,従来動的なバランスを必要としたウィリー動作が安全に行うことが可能となり,また,前輪の浮上高さを駆動輪の動作で調整できることから,高い段差へのアプローチが実現できて.さらに,駆動輪の位置/高さ変更するリンク機構を利用し,車いすの大車輪を浮上させる方法,および駆動輪を段差上に持ち上げる方法をそれぞれ提案した.これらを組み合わせて段差踏破を実現できた.また,段差降下動作にも,静的ウィリーを利用して,衝撃力の少ない段差降下を実現した. これらの段差昇降アルゴリズム実行の煩雑さを解消するための半自動化システムを開発した.車いすの左右に段差高さや車いすの傾斜角度などを測定できるレーザーセンサを搭載し,段差高と車いすからの距離を測定することで,段差昇降アルゴリズムを自動で実行するシステムを構築した.搭乗者の段差昇降開始指令により動作を開始し,段差昇降を自動で実施し,終了後はジョイスティックによるマニュアル操作に移行する.実験により,半自動化システムにより,段差昇降が可能であることを実証した.
|