研究課題/領域番号 |
15K01461
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
和田 親宗 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 教授 (50281837)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 姿勢推定 / 起立動作 / 慣性センサ |
研究実績の概要 |
(1)靴型計測装置の改良:どのような場所でも姿勢の推定を実現するため,重心位置推定に必要な両足相対位置および足底圧力を計測できるセンサ内蔵の靴型計測装置を試作した.両足間距離の計測は,超音波センサを使って行うが,そのセンサ数,センサ位置,センサ取り付け角度を音波の伝搬解析手法を用いて求めた.そして,センサデータから両足間距離を算出する際の各センサ出力の重み付けに関して,ニューラルネットワークによって最適値を求めた.足の回転角度は,慣性センサを用いて行うが,センサデータからの角度算出を拡張カルマンフィルタによって求めた.ただし,ヨー角度については,所定の精度を得られなかった.成果を基に,靴型計測装置を試作した. (2)伸展相における姿勢推定の改良:昨年度から進めている伸展相における姿勢推定を改良した.新しいリンクモデルを開発し,足関節と膝関節の角度推定を試みた.胸部に取り付けた慣性センサデータをもとに,リンクモデルで両関節角度を推定したところ,モーションキャプチャシステムによる角度を真値として角度推定精度を調べたところ,5度程度の誤差となった. (3)起立動作支援装置の試作および筋骨格系モデルの試用:研究開発中の姿勢推定システムの評価のために,椅子座面昇降装置の制御を試みる.その準備段階として,椅子座面昇降機構の開発と筋骨格系モデルを導入した.椅子座面昇降機構については,空気圧およびモータによって前後,上下,角度変化を実現する機構を開発した.ただし,位置制御を正確に行えていない問題点がある.また,筋骨格系モデルについては,ソフトウエアに慣れるため,歩行動作の人体モデルを作り,筋出力の推定などを試みた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)靴型計測装置の改良:まず,両足間距離の計測のための超音波センサの個数,取り付け位置,取り付け角度を,音波の伝搬解析手法を用いて求めた.音波伝搬の解析プログラムを開発し,伝播時間,電波強度を基に,センサ数等を定めた.そして,センサデータから両足間距離を算出する際の各センサ出力の重み付けに関して,ニューラルネットワークによって最適値を求めた.その結果,足位置については,3センチ程度の誤差で推定が可能となった.次に,足の回転角度については,衝撃等の外乱やドリフトに誤差を減らすために,慣性センサデータに拡張カルマンフィルタを適用して,推定を行った.その結果,ロール,ピッチについては精度良く推定できたものの,ヨー角度については,足の動きが想定以下であったため,センサ感度等のため,所定の精度を得られなかった.最後に,上記の成果を基に,靴型計測装置を試作した.ただし,技術的な問題のためリアルタイム動作可能なシステムは完成していない. (2)伸展相における姿勢推定の改良:慣性センサの上下方向の移動を加味した新しいリンクモデルを開発し,伸展相の姿勢を定義する足関節と膝関節の角度推定を試みた.体幹の動きは胸部に取り付けた慣性センサから取得し,人体リンクモデルにより,両関節角度を推定した.モーションキャプチャシステムによる角度を真値として推定精度を調べたところ,被験者10名に対し5度程度の誤差で推定可能であることがわかった. (3)起立動作支援装置の試作および筋骨格系モデルの試用:椅子座面昇降機構については,空気圧およびモータによって前後,上下,角度変化を実現する機構を開発した.ただし,空気圧を用いているため,姿勢変化に伴う荷重の増減により位置や角度が変化し,位置制御を正確に行えていない.筋骨格シミュレータについては,試みに歩行動作の人体モデルを作り,歩行時の床反力,筋出力の推定を行った.
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今後の研究の推進方策 |
(1)足のヨー角度推定方法の完成:足の回転角度の内,ヨー角度の推定については,精度が悪い結果となった.原因としては,想定以上に,ヨー方向の角度変化が小さく,慣性センサデータのS/N比が良くなかったことが挙げられる.解決方法として,分解能の異なる慣性センサを利用すること,新たな信号処理技術を活用すること,あるいは,超音波センサデータを利用してヨー角度を推定すること,を利用し推定手法を完成させる. (2)姿勢推定システムのリアルタイム化:オフラインでの姿勢推定は実現できており,それをリアルタイム処理できるソフトウエアを開発する.現状では,様々な計測環境で,様々なソフトウエアを使って計測しており,全ての計測を1つのコンピュータでおこなうことはできず,リアルタイム処理の実現の障害となっている.ソフトウエアを統一し,計算量を減らすことで,リアルタイム処理の実現を目指す. (3)椅子座面昇降機構の位置制御方法の開発:現状は,空気圧を用いて,椅子座面の上下や角度を変えている.そのため,正確な位置の制御を行うことが難しい.そこで,ロック機構等を組み合わせることで,仮に空気圧が変化しても上下位置や角度が変化しないような機構を開発し,位置制御を行う. (4)筋出力推定手法の開発:筋骨格シミュレータにおいて,椅子からの起立動作を模した人体リンクモデルを開発する.そのリンクモデルに,姿勢推定システムから得られる身体位置情報を入力し,筋骨格シミュレータによって筋出力を推定する. (5)起立動作支援システムの制御法の開発:推定された筋出力が,起立動作に十分であるか否かを判定し,必要に応じて椅子座面高さや角度を調整する制御法を開発し,ヒトを対象として有効性を検証する.
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