H29年度においては、双方向力覚を有する骨盤運動支援用ロボット装具がリハビリ時の手技を運動量・力ともに記録可能である特性を活用し、療法士等の手技をより明確にするために、非専門者と専門者である療法士においてロボット操作の視覚化を行なった。非専門者において装着者に対してリハビリ様動作を行なうようロボットを操作したときに、軌道はスムースに見えるものの、力に関しては操作者と装着者の間で力が互いに振動しあう様子が見られた。一方、専門者である療法士はロボットの操作のみではなく、通常の治療時に患者の状態や声かけ等を駆使するように装着者へ対応し、非専門者がロボットのバイラテラル操作で装着者身体運動を試みるのに対し、装着者の自発的運動と全身協調運動の結果として、骨盤運動が行なわれるという側面が考察された。今回のバイラテラル操作の対象はリハビリ時の運動治療の最初のメニューである骨盤運動を対象としたが、やはり到達把持運動は全身運動であること、また、ただ運動を加えるのではなく、患者に運動促通(タイミング等)を行なうための患者身体の観察並びに声かけが非常に重要であることが、より明確となった。よってロボットは療法士の患者に対する全体的な手技と融合してこそ、視覚化というロボットの利点が発揮されることが考察された。一方、骨盤運動様ロボットと使用する到達把持のためのセンサ化把持ブロックについては、健常者20名程度における到達把持実験を行い、簡単な到達把持に関しては左右肢の到達時間等にほぼ差はないこと、到達把持対象位置に対して到達時間に差異が出るグループと位置にかかわらず同じ到達時間であるグループに分かれたこと等が見いだされ、現在被験者数を50名に拡大すると共に、患者に対し到達把持実験を行なった。これらの結果は全国作業療法学会等で申請者の連名にて発表予定である。
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