本研究は、モバイル端末と小型多機能センサを用いて歩行リハビリを行っている患者の歩行状態を計測し、分析評価の結果を分かりやすく表示できるシステムを構築することを目的としている。はじめに基本的なシステム構築に際して、歩行中のセンサデータの変化を確認するため、健常高齢者と20代健常者を対象に計測を行った。計測方法は、腰部と両足果上部にセンサを装着し、加速度と角速度データを取得した。同時にカメラで画像データを記録した。次に、脳卒中片麻痺リハビリ患者を対象に継続的な計測を実施した。これらのデータより歩行フェーズの切り出しを検討し、両足果上部から得られる角速度データを利用することとした。リハビリ被験者に対しては、足の接地や離地の検出においてこのデータの利用が有効であった。 計測データから基本的な歩行パラメータを算出するとともに、それらを複合的に用いて規則性や対称性、円滑性や安定性を評価できる指標について検討した。そのなかで、10m歩行テストの3分割解析による転倒指標、リサージュ図形解析による体幹動揺指標を作成した。これらの評価指標は、健常者とリハビリ患者の間で大きな有意差を表し、歩行特徴や歩き方の安定さを示すのに有効であることが分かった。長期間のデータ取得の結果、評価指標は有意な変化を示し、リハビリによる回復状況をある程度把握できることを確認した。計測調査期間において療法士や被験者へ分析結果のフィードバックを行い、システムの操作法や結果の提示法を検討した。本システムは、ユーザの簡単な操作で歩容やリハビリ回復の状況を表示できるものとなっている。今後、分析結果の表示法の改善やリハビリプログラムの作成にリンクする機能の追加などが課題である。
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