研究課題/領域番号 |
15K01469
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
西原 賢 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 教授 (80336495)
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研究分担者 |
河合 恒 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (50339727)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 地域在住高齢者 / 運動機能 / 筋厚 / 超音波画像 |
研究実績の概要 |
高齢者の廃用性筋委縮は全身に一様に起きるよりも特定な筋に偏る傾向がある。立位保持時の最も主要な抗重力筋のひとつである大腿四頭筋は、下肢の加齢による運動機能を調べるための大事な筋であるとも言える。大腿四頭筋はさらに大腿直筋、中間広筋、外側広筋および内側広筋の複数の筋から構成されており、これらの筋量と筋力との相関を調べることは有用であろう。近年、超音波診断装置による組織断層撮像は、安全性の面から注目されてきた。しかも、超音波診断装置の進歩により、高解像度での撮像が可能となった。超音波による大腿四頭筋厚と運動機能との関係についての報告は散在しているが、これらの研究はサンプル数が少ない、また、大腿四頭筋に含まれる複数筋と筋力とを比較した報告は少ない。そこで、本研究では、地域在住高齢者における性年齢別の大腿四頭筋の複数の筋、大腿直筋、中間広筋の筋厚を超音波診断画像から基準値を求め、筋厚と、膝伸展筋力や歩行速度などの運動機能との関連を明らかにすることを目的とした。 高齢者831人の超音波画像計測装置を用いて大腿直筋、中間広筋、大腿四頭筋の筋厚と、膝伸展筋力、歩行速度、開眼片足立ちなどの運動機能を計測した。筋厚は男女別の5歳刻み年齢別平均値と標準偏差を示し、年齢群間の差を分散分析にて検討した。筋厚と運動機能指標との相関を分析した。 結果として、男女高齢者の筋厚は高齢になるにつれて有意に減少した。筋厚は運動機能指標と有意な相関を示した。大腿四頭筋厚の大腿直筋厚と中間広筋厚とでは加齢による減少の程度や運動機能との相関関係で異なる特徴を示した。 本研究により、高齢になるにつれ膝伸展筋力に関係する筋厚が低下するなかでも筋によってその程度が異なることが見受けられた。すなわち、同じ大腿四頭筋のなかでも大腿直筋厚と中間広筋とでは年齢による減少の程度が異なり、膝伸展筋力との相関の程度も異なっていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地域在住高齢者の本格的な計測やフォローのための調査準備、参加協力者との調整ができ、大規模のデータ収録を行い多角的な統計処理や分析を行った。高齢者は男女と5歳刻みの年齢群に分けて加齢変化で減少しやすい筋と比較的よく維持される筋があることが明らかにでき、国際学術誌に投稿による査読者とのやりとりが進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
高齢期になり、日常の活動が少なくなると廃用性筋委縮や筋組織の変化により筋量が低下していく。これに付随して筋力が低下し、運動機能や日常生活動作の障害につながる。筋量の減少により転倒のリスクが格段に上昇することが報告されており、筋質の評価方法の確立は急務である。 平成28年度と29年度に行った高齢者を対象とした生活機能に関する調査である「お達者健診」で収集したデータを整理したものから運動機能と大腿直筋や中間広筋の筋量との関係を詳細に検討して加齢による特徴を明らかにすることにより、高齢者の転倒予防に活用できる研究としてまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 実施初年度の平成27年度に予定していた調査が平成28年度から実施することとなり、学会発表のための旅費や論文投稿にかかる費用も平成29年度から本格的に必要となってきた。 (使用計画) 平成30年度も計画している高齢者生活機能に関する調査の人件費や成果発表の費用に使う。
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