本研究の目的は、在宅認知症高齢者の住環境整備の現状把握と支援のあり方を模索することである。本研究は4件の調査で構成した。 2件は認知症高齢者の在宅生活と住環境整備、福祉用具について最も現状を把握する専門職であるケアマネジャーと福祉用具専門相談員に対して行った郵送法による意識調査である。それぞれに調査用紙を作成し、住宅改修への取り組み意識と現行制度への要望を把握した。両者の結果を比較したところ、共に90.0%以上が認知症の住宅改修に関心があると回答した。しかし身体機能の低下を対象とした住宅改修より難しさを感じていた。福祉用具専門相談員はケアマネジャーに比べて苦手意識があり、消極的であることが把握された。なお、認知症高齢者を対象とした住宅改修は行動の変化、介護負担の軽減、QOLの向上効果を高く評価していた。一方、現状の介護保険制度における住宅改修費給付制度は認知症高齢者に使いやすいかについては、使いにくい制度であり、その理由として認知症を対象とした工事が給付対象項目に含まれていないことを挙げた。 また、両者を対象に、それぞれがこれまでに担当した認知症高齢者の事例で、住まいにおける住環境に関連する本人と家族の困りごと(BPSD含む)について事例収集を行った。収集した事例から抽出された困りごとを内容別に分類し分析した。その結果、居室を中心とした生活空間では、主な困りごととして「部屋の位置がわからない」37.0%、「トイレ以外で排泄する」36.4%、「外出して戻れない」30.8%、「家の中を徘徊する」27.0%を把握した。困りごとの上位は排泄に関連する内容が多く、排泄を目的として移動を開始し、トイレの位置が分からない(または認識できない)ために家の中を徘徊し、結果としてトイレ以外で排泄する等の関連性が示された。これらの問題に対して実施された住環境整備や工夫についても収集した。
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