研究課題/領域番号 |
15K01472
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
鳥山 朋二 富山県立大学, 工学部, 教授 (00418518)
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研究分担者 |
浦島 智 富山県立大学, 工学部, 講師 (20315831)
馬田 一郎 国立研究開発法人情報通信研究機構, ユニバーサルコミュニケーション研究所多感覚・評価研究室, 研究員 (40374110) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 高次脳機能障がい / 危険運転行動 / 運転行動検出 / 運転行動表出条件 |
研究実績の概要 |
本研究は,高次脳機能障がい者の自動車運転行動の中から,危険度の高い運転行動を検出する手法の確立および,その運転行動表出条件の明確化を目的としている.平成29年度は医療従事者,運転指導員とともに,前年度に実施できなかった新運転コースの検討を進め,予定通りこのコースを用いた実験を実施した.その結果分析(国際会議採択済.H30年度発表予定,国内学会で発表1件)中に,一部の運転行動分析精度が現状のシステムでは不十分になることが判明した. また,実験アンケートで明らかにされた,EOG法で用いる眼電センサ電極の装用感の悪さの問題とJINS社製眼鏡型ワイヤレス眼電センサの精度の低さの問題の解消方法をそれぞれ検討し,適用可能条件を明らかにした. これらの知見をもとに,平成27年度までに試作したシステムに改良を加えるとともに,当初予定通りH29年度実施予定であったフェーズ3用の公道運転コースを,これまでに明らかになっている危険運転行動表出条件を盛り込んで再設計した.ただし, H29年度中に投稿を予定していた,危険行動検出システム構成に関わる論文については,上記の理由(システムの不十分性判明)より,フェーズ3実験終了後の執筆に計画変更した.また,フェーズ3の実験はコース実験の2倍以上という被験者データの分析を目標としているため,効率的な運転者行動分析を可能とするツールを開発した(国内学会で発表1件). 以上のシステム構築と公道実験コースの整備を年度後半には終えたものの,昨年度末は北陸地方が例年にない大雪で実験可能日が少なかったこと,および低気温での実験実施は,障がい者の健康にリスクがあると医療従事者から指摘があったことから,冬季の実験実施を断念した.また,新年度当初は自動車学校の繁忙期と重なるため,H30年度の5月から6月にかけて,コース実験の2倍以上の被験者のデータ取得を目標に実験を実施する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H29年度は,H28年度に実施予定でありながら実施できていなかった新運転コースの検討を進め,それを完了した.またH29年度に実施予定であったこのコースを用いた実験についてもEOG法で用いる眼電センサ電極の装用感の悪さの問題とJINS社製眼鏡型のワイヤレス眼電センサの精度の低さの問題の解消方法をそれぞれ検討し,適用可能条件を明らかにすることで解消し,進捗に悪い影響を与えなかった. しかしながら実験結果の分析中に,一部の運転行動分析が現状のシステムでは精度不足になることが判明したため,平成27年度までに試作したシステムに改良を加えることを余儀なくされ,その結果としてH29年度中に投稿を予定していた,危険行動検出システム構成に関わる論文については,フェーズ3実験終了後にまとめることに計画変更した.このことは当初計画からの遅れである.また,このシステム再構築は多少時間を要したものの,計画に遅れが出るほどのものではなかったが,被験者の募集がこの開発に伴って遅れたことが,昨年度の北陸地方の大雪と相まって,年度内に十分な実験が実施できないという事態を招いた.このことも,計画の遅れとみなすことができる.ただ,論文化の遅れについては,全体スケジュールに影響を与えることはないと考えている.また,当初計画に入っていなかったこととして,多くの被験者データの効率的な分析が期待できるツールを開発したため,もともとH30年度に見込んでいたデータ分析の速度は向上すると考えているは.以上のことから,計画終了に向けては遅延要因は少なく,おおむね順調に進捗していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
H30年度は当初の予定通り,H29年度に再設計を実施したフェーズ3用のコースを用いて,5月から6月にかけて,コース実験の2倍以上の被験者のデータ取得を目標に実験を実施する.本実験の性格上,被験者は医師が公道上の運転を許可できると判断した者に限られ,かつ高次脳機能症状が残存していることが条件となるため,極めて対象が限定され,これまでの実験においても被験者の確保に相当な困難が伴っている状況である.従って,同一被験者に対して,ある一定期間後に再度実験を行うことも視野に入れ,延べ人数で被験者を確保する予定である.また,当初目標では「社会的行動の障がい」と「病態失認」について,運転時の危険行動を運転者自らが理解することを支援するための行動フィードバックシステムの構築を行うとしていた.このシステムの仕様について,医療関係者と協議を進めたところ,日常生活のフィードバックシステムがあれば十分であり,あえて運転行動を用いて判断する必要はないのではないかとの指摘を受けたため,このシステムの構築は行わず,既存の日常生活のフィードバックの受け入れ度合いを指標として参照することとする. 以上,H30年度に実施する実験の分析結果を用いて,医療機関等で実績のある運転可否判断基準の不備に言及できると考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
H29年度に実施した新運転コースを用いた実験結果分析結果について,H29年度内に国際会議に投稿し,採択を得たものの,発表年度がH30年度であったため,出張旅費・学会参加費に差が生じた.また昨年度実施予定であった新運転コースにおける公道実験数が予定数に達していないため,人件費・謝金についても差が生じている.
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