研究課題/領域番号 |
15K01474
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研究機関 | 上武大学 |
研究代表者 |
井田 博史 上武大学, ビジネス情報学部, 准教授 (20392194)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 姿勢制御 / 立位バランス / 予測性姿勢調節 / 補償性姿勢調節 / 障害物回避 / クリアランス / 転倒予防 / ヴァーチャル環境 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,筋活動計測と動作解析の手法を用いて,障害物回避動作中に発揮される初期・予測性・補償性の姿勢調節3位相それぞれについて,その機能的役割を明らかにすることを目的とする.これに向けて,「目標①:姿勢計測実験系の構築と再現性の確認」,「目標②:踏み越え動作と通り抜け動作の実環境実験」,「目標③:視覚情報を操作したヴァーチャル環境実験」,の3つの到達目標を設定した.初年度(平成27年度)においては,当初計画で想定されなかった実験機器の不具合などのため,各目標において延期もしくは部分的先行があった.そのため今年度(平成28年度)は目標ごとに方策を再設定し,それぞれ以下のような成果が得られた. 目標①では,姿勢計測実験系の構築が完了し,また予備実験を通してデータの再現性が確認されている.動作解析用赤外線カメラに不具合が頻発したが,これらはすべて新型機に交換された.動作解析システムの導入により,従来的な姿勢筋活動の分析に加えて,動作パターンとの関係性についても検討を拡大することが可能となった.目標②においては,延期されていた踏み越え動作と通り抜け動作に関する被験者実験を行い,続いてデータ解析に着手した.得られる結果からは,障害物回避におけるバランス保持のための姿勢筋活動,およびクリアランス確保のための動作パターン生成に係る制御機序の解明が見込まれる.目標③については,初年度に先行実施したヴァーチャル環境における障害物回避実験について,結果をまとめ成果公開を進めた.ヴァーチャル環境では実環境と比べて姿勢筋活動が低減することが明らかになり,また障害物の視覚情報や環境の空間知覚が姿勢調節に複合的に関与することも示唆された.これらの知見は,ヴァーチャルリアリティ技術の健康科学分野への応用に向けて,学術的な意義は大きいと考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度(平成27年度)においては当初計画と比べて各到達目標の達成度に前後が生じたものの,今年度(平成28年度)はそれぞれが想定に近い達成段階に回復した.このことから本研究課題の進捗は順調であるとみなす.個別の到達目標に対する状況については以下のとおりである. 「目標①:姿勢計測実験系の構築と再現性の確認」では,初年度に引き続き動作解析用赤外線カメラに不具合が発生したため,随時交換を進め,今年度後期に新型カメラのみのシステム構成となった.その後床反力計や筋電計などのアナログ入力装置も含めて全面的調整を行い,姿勢制御実験用途のカスタマイズが完了した.この到達目標は,当初計画より遅れがあったものの,今年度をもって完遂した. 「目標②:踏み越え動作と通り抜け動作の実環境実験」においては,目標①で構築された姿勢計測環境を用いて,初年度から延期されていた被験者実験を実施した.これに続いて姿勢筋活動および動作パターンのデータ解析用プログラムを作成し,脚踏み出し運動中の動作制御パラメータの導出に着手した.この到達目標については,計画の遅れを概ね取り戻したが,次年度序盤まで継続する見込みである. 「目標③:視覚情報を操作したヴァーチャル環境実験」では,前年度に先行して実施した実験データの結果をまとめ,学術論文および学術会議発表などで成果公開を行った.加えて,実験で用いたヴァーチャル映像刺激の知覚および動作への影響をより詳細に検討するため,ヴァーチャル環境における空間知覚に関する実験,および単純脚挙上を課題動作とした対照実験を実施した.この到達目標については結果のまとめまで完了しており,次年度の成果公開と総括に繋げる.
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今後の研究の推進方策 |
「目標①:姿勢計測実験系の構築と再現性の確認」については,今年度(平成28年度)で目標を達成した.今後は,必要があれば新規機器の導入や故障機器の修理を行いつつ,実験環境を保守管理する.「目標②:踏み越え動作と通り抜け動作の実環境実験」に関しては,次年度(平成29年度)の前期中を目安としてデータ解析と考察を完了させ,その後成果公開に着手する.ここでは障害物回避の有無による比較のみならず,脚踏み出しの距離および方向に応じて発揮される姿勢調節活動についても検討を拡大する.「目標③:視覚情報を操作したヴァーチャル環境実験」については目標を概ね達成しており,今後は成果公開に重点をおく.あわせて,ヴァーチャル環境の空間知覚実験と単純脚挙上の対照実験についても検証を加え,先行実験の結果とともに包括的に考察する.
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していた被験者実験のうち若干名分が今年度(平成28年度)に完了しなかったため,ここで予定していた人件費・謝金の支出が当該年度の所要額に満たなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
被験者実験のための人件費・謝金の一部として使用する.
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