本研究では、今後高齢化が加速すると予測されている東京都(都市部)の地域在住高齢者を対象とし、自助、互助、共助、公助とのつながり(連携)において、心身の機能が長期的にどのように変化していくのかを追跡調査した。東京都内の3自治体において、自治体が主催する運動教室(公助)を終了した者や、地域で自主的に集まって体操を続けている者(互助)、あるいは自分で介護予防に資する活動をしている者(自助)、初期評価に参加していただいたおよそ150名程度を対象に、身体機能(歩行速度、バランス機能、筋力)と生活機能(基本チェックリスト)を追跡調査した。残念ながら、本研究の開始年度(平成27年度)に合わせて、介護保険法が改正となり、要支援者の一部の介護保険サービスが自治体の事業に移行するなど再編が行われたため、介護保険サービスを利用した者(共助)のデータはほとんど収集できなかった。追跡調査結果では、継続して測定に参加していただける人の率は低かったが、公費をかけて実施された公助に参加した者の一部の身体機能の維持効果が高い傾向は認められ、互助や自助で介護予防に資する活動を継続していた者も心身の機能は維持していることを確認した。 本研究では追跡できた対象者が少なくなり、期間も最長でも約2年間という比較的短い追跡期間でしかなかったため、新規要支援・要介護認定の発生数はほとんどなく、新たな要支援・要介護発生リスクの有意な指標を見出すことはできなかった。今後、追跡者数の増加や期間の延長によって、地域在住高齢者の心身機能を維持・向上させるサービスなどの在り方についてさらに研究を深めていく必要がある。
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