研究課題/領域番号 |
15K01476
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研究機関 | 千葉県立保健医療大学 |
研究代表者 |
藤田 佳男 千葉県立保健医療大学, 健康科学部, 准教授 (40584206)
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研究分担者 |
三村 將 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (00190728)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 高齢者 / 障害者 / 運転適性 / 運転者教育 / 運転リハビリテーション / 有効視野 / 抑制機能 |
研究実績の概要 |
第1研究「健常高齢者の認知機能と実車評価」は1年目に終了した。その結果、個人のパーソナリティ特性は実車成績との関連を認めなかったが、処理速度課題については相関を認め、高齢運転者の処理速度を含む認知機能は運転適性に相応の影響があることが示唆された。また、2年目は第2研究の教育プログラムの作成に重点を置く計画であったが、第1研究で用いた自身の視覚認知機能を知るための有効視野検査装置(VFIT-EV)の課題難易度や検査時間が集団実施するには困難であることが明らかになった。そこで急遽、集団実施可能な改良を行うこととした。従来のVFIT-EVが、40分程度かかる上に習熟度の差が出るのに対し、改良版(VFIT-C)はその半分程度の時間で実施可能であり、比較的習熟の影響を受けにくい。改良版のパイロットスタディを、60代18名、70代18名、80代10名に実施したところ、60代、70代は70%以上がすべての下位検査を実施可能であったが、80代は30%程度であり低かった。しかし、概ね下位検査の一部は実施可能であり一定の指導を行えることが明らかとなった。また、これと並行して教育プログラムの作成を行い、その成果を埼玉県県民生活部にて「埼玉発・高齢者安全運転推進プロジェクト」として先行実施した。また、高齢者や軽度認知障害を持つ者の運転について、さいたま市や埼玉県交通安全協会など5か所以上から依頼を受け市民講座などを行うことにより、研究成果の還元を行った。また専門家に向けては第31回日本老年精神医学会金沢大会にて、シンポジウム「認知症診療における他職種の役割に参加し、作業療法士の現状と役割について啓発活動および研究成果の発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は3年間で3つの研究を行う計画である。2年目を終了した時点で、全体としては順調であるが、それぞれの部分では若干の課題がある。第1研究の「健常高齢者の認知機能と実車評価」は1年目に終了した。その結果、高齢運転者の問題は処理速度にあるのではないかと推察できた。次に第2研究の教育プログラムの作成に着手する際に、埼玉県庁県民生活部より、「高齢者安全運転支援プロジェクト」の一部として共同研究の申し入れがあり、健常高齢者向け教育プログラムの作成、およびその効果測定として第2研究を行うこととした。しかし、第1研究でも使用した体験者が自身の視覚認知機能を知るための有効視野検査装置(VFIT-EV)が本プロジェクトの実施要件である集団実施にそぐわないことが明らかになった。VFIT-EVは元来臨床場面で脳卒中患者などの有効視野を簡便かつ高精度に測定することが可能であるが、検査者1名が説明・課題の教示に必要であり、検査時間に40分程度かかる。そこで、本プロジェクト向けにVFIT-EVの検査コンセプトはそのままに、検査時間の短縮および集団実施可能な改良を行うこととした。改良には約6か月を要したが、概ね要件を満たすものが完成し、改良版をVFIT-Cとした。VFIT-Cは中心視野課題に、カラータイルを用いており、従来版より課題難易度が低く、また処理する脳部位も異なる。これを用いて、パイロットスタディを行ったところ、60代~70代後半までは良好に測定できることが明らかになった。そこで80代以上の運転者の判断が可能な指標を現在確認中である。子お確認に若干の時間を要しており、その結果第2研究については半年程度遅延している。また、第3研究は教育プログラムが完成次第着手の予定である。
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今後の研究の推進方策 |
3年目は、第2研究および第3研究の実施を行う。第2研究は6か月程度遅延しているが、使用するソフトウェアの開発および、パイロットスタディは終了し、これ以上の遅延なく実施できる。第3研究も若干の遅延が予測されるが、実施期間中にデータ取りは終了できる予定である。また、これまでの研究成果を6月の第82回日本交通心理学会、および8月の米国運転リハビリテーションカンファレンス、9月の第51回日本作業療法学会にて発表予定である。第2研究、第3研究を推進するために、研究補助者1名を雇用し、検査データ取得および、分析のスピードを速める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が年度途中で勤務先を異動したため研究遂行及び、予算の執行が行えない時期があった。それゆえ、2年目に使用する予定であった額が使用できていない。
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次年度使用額の使用計画 |
第2研究および第3研究を迅速に遂行するため、研究補助者の増員を検討する。また、必要に応じて、データ処理や、ソフトウェア修正の委託も計画している。
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