前年度には共同研究先で教育プログラムを実施する埼玉県県民生活部の要請により、有効視野測定の時間短縮を目指して測定ソフトウェアの改修版「VFIT-C」を作成した。今年度は引き続きこのソフトウェアを高齢者に適用可能かどうかを検証した。その結果、VFIT-Cは高齢者にも直感的で理解しやすく、後期高齢者でも容易に体験可能であること、短時間で練習が終了すること、検査時間も従来の40分から半分程度に短縮できること、課題難易度が下がるため体験者の不満が少ないこと、などが明らかになった。しかし、課題難易度を下げすぎると若年者等で天井効果が発生し、比較的機能レベルの高い若年高次脳機能障害者の測定が困難になる可能性があった。そこで、本ソフトウェアが若年者に対しても活用できるかを明らかにすることを目的として、20代の健常学生25名を対象にVFIT-CおよびVFITを試行し検証することとした。実施課題はいずれのソフトウェアもgo/no-go検査および、二重課題検査のStage1(視野角半径4°)、StageⅡ(7°)の4課題を実施した。それぞれの正解率、FalseAlarm(お手つき)数、反応時間の平均およびその相関を調べた。その結果、正解率およびその標準偏差はVFITが87.2±11.1%、VFIT-Cが98.1±2.4%であった。それらの相関係数は正解率が0.62(P <0.001)、FalseAlarm数0.60(P <0.005)、反応時間は0.56(P <0.005)はかなりの相関が認められた。VFIT-CはVFITとの併存妥当性があるが、は殆どの対象者が正解率90%を超えるなどの天井効果が認められた。それゆえ、若年高次脳機能障害者を対象とした実験を行いその実用性を検証することが今後の課題となった。研究成果は2019年第53回日本心理学会で報告予定である。
|