移動しながらの携帯端末利用(所謂歩きスマホ)が歩行弱者への安全に影響を及ぼすことから,各種対策が検討されているものの利用者の危険意識は低いままであり,歩行者側が多くの注意を払い危険回避せねばならない状況である.高齢者の転倒が社会的問題となり転倒予防事業が展開されるのに逆行して,歩きスマホの増加により高齢者の歩行環境は悪化している.本研究では,歩行支援に有用な情報整理を目的とし,携帯端末利用者の周囲への注意度評価,姿勢制御・歩行等の解析を行った.また,歩きスマホに遭遇した際の反応・挙動を計測・解析した. 高齢者の周辺視野の狭窄の疑似を目的とした視野制限眼鏡,膝の不自由さと動作・反応低下の疑似を目的とした高齢者疑似体験セットを用い,インソール型の足圧分布計にて歩行解析を行った.メール利用時には歩行速度低下,周囲障害物への接触回数増加が顕著であった.端末課題を付した場合の自由歩行では,蹴り出しや歩行速度に関わる足指部付け根の圧力に低下傾向が見られた.歩きスマホでは,歩行中の蹴り出しと歩行速度が低下した. 携帯端末の画面サイズやコンテンツをパラメータとして変え,画面注視の際に周辺への注意が低下する状況を分析した.注視画面の周囲に反応用ターゲットを設定し,反応時間をパラメータとして周囲への注意に及ぼす影響を分析した.視野範囲,視線移動速度,反応時間等により注意度について検討した.大画面サイズは周囲への注意に必要な前方の有効視野を遮り,小画面は有効視野を狭めることがわかった. また,歩行中の高齢者が向かってくる歩行スマホに向かい合った際に取る退避行動の危険性につき検討するため,膝関節の可動制限などにより歩行機能低下状態を作り健常者により実験した.足底圧中心軌跡と足指部,前足部,踵部の足底圧力を測定した.
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