研究課題/領域番号 |
15K01483
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研究機関 | 新潟工科大学 |
研究代表者 |
寺島 正二郎 新潟工科大学, 工学部, 教授 (20278071)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 福祉工学 / 支援工学 / リハビリテーション工学 / 操作支援機器 / 重度障がい者 |
研究実績の概要 |
頸髄損傷などの重度障がい者は上肢も自由が利かないため,電動車椅子や携帯電話,各種福祉機器の操作にも困難が伴う.この様な重度障がい者がPCやスマートフォンを操作する場合には“マウススティック”と呼ばれる棒を口に咥えて行うことが多いが不便も多い.そこで,重度障がい者においても随意的な動作が可能な“舌運動”に着目し,口唇で咥え,舌で操作する“ホイッスル型リモコン”を開発している.ここで,“ホイッスル型リモコン”からの操作指令はBluetoothにより通信され,ペアリングさせたタブレット端末やスマートフォン上に構築した専用アプリケーションを利用することで,通話やメール,ネットなどの利用を可能とするシステムを構築している. 本年度は“ホイッスル型リモコン”の小型化を図ると共に,“ハンズフリーマイク型リモコン”の試作を行った.また,操作対象であるタブレット端末やスマートフォンに専用アプリケーションをインストールすることで,スマートフォンの操作を行い,本システムの有効性を検討した. 被験者はスマートフォンの操作を熟知している健常者3名を対象とし,“ホイッスル型”,“ハンズフリーマイク型”について舌での操作実験を各3回行うと共に,比較対象として,それぞれのリモコンを手で操作する実験も併せて行った.実験に際して,スマートフォンの画面上に表示したマウスカーソルを操作することで文字を入力することとし,一般的な会話である“きょうはいいてんきですね”の規定文章を入力する際の所要時間を計測した.入力に要した所要時間は約3分から12分と被験者や試行によって大きな差が生じた.これは文字入力の際に入力確定に用いる“押し込みスイッチ”の感度が高く2度押しが多く発生し,誤入力した文字の消去のために所要時間が延びたと考えられる.今後は2度押し発生防止と,誤入力に対する対応策の検討が必要と考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画としては,主に下記の2点を行うことを予定しており,それぞれ当該の目標までは到達できた. 1)タブレット端末やスマートフォン上を当該リモコンで操作するための専用アプリケーションソフトの開発:“ホイッスル型リモコン”からの操作信号に基づき,操作対象であるスマートフォンやタブレット端末を操作するためのプログラムの作成する.ここで,一般に,スマートフォンやタブレット端末にはマウスカーソルの表示がないことから,画面上にマウスカーソルを表示させると共に,表示したマウスカーソルでクリックなどを行うことでスマートフォンなどを実際に操作できるプログラムを製作した. 2)実験・評価:試作した“ホイッスル型リモコン”により,各操作対象の遠隔操作を行い,その操作性について評価を行った.この中で,端末を操作する専用アプリケーションソフトやリモコンの改良点などを見出した. これらの実施内容から,本研究は「概ね順調に進展している」と考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である今年度は以下の内容について進める. 1)端末を操作する専用アプリケーションソフトの改良:現状ではクリックなどに伴う操作が可能であるため,文字入力やメールの送受信,電話の発信などは可能であるが,「ページをめくる“スワイプ動作”」に対応していないため,機能の拡充を図る. 2)ホイッスル型およびハンズフリー型共に,リモコンの小型化と操作性の向上を目指す. 3)研究室内での評価実験だけではなく,頸髄損傷の方などに実際に使用していただき評価を行うと共に更なる改良点を見出す.
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次年度使用額が生じた理由 |
重度障がい者のための操作支援装置として,本研究では“ホイッスル型”や“ハンズフリーマイク型”のリモートコントローラーを提案しているが,このシステムの構築には専用の電子回路やソフトウエアーの開発が必要不可欠となる.また,開発した基板やソフトは数回の改良や,再制作が必要となることが一般的であるため,それを見越して,最終年度に研究費を繰り越せる様にした.
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次年度使用額の使用計画 |
本年度の研究計画にも記述した通り,操作性の向上のためにリモートコントローラーの再制作が必要である他,端末を操作する専用アプリケーションソフトの改良が必要である.そこで,これらの費用に充当する.
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