最終年度は、これまでの研究で得られた結果に基づき、荷重誘導トレーニングを臨床で安全に実践するための課題について検討を行った。 これまでの研究では、歩容の修正(歩き方を変えて荷重量の集中を軽減すること)によって足底潰瘍好発領域の最大圧を28.0~60.5%軽減できることを確認した。また健常者を対象とした測定結果から荷重量の過多を音で通知するシステムを使用することで、該当領域の荷重量を効率よく軽減できること確認した。 上記の成果を臨床応用し、荷重誘導トレーニングを実践するために、足底圧の偏りや過剰な集中が想定される症例(部分切断後の症例)を対象に測定した結果、患部または対側の足部において顕著な足底圧の偏りが確認された。また足底圧の偏りに伴う荷重量の過多を軽減する目的で装具を着用したり歩容の修正を行ったりすることで、歩行不安定性が出現する症例も一定割合存在することが明らかとなった。 以上の結果より荷重誘導トレーニングを臨床で安全に行うためには、創傷増悪や再発のリスクを高める足圧分布異常の評価に加えて、歩行時に顕在化する転倒リスクを機能的・形態的側面から推測し対策を講ずる必要があると考えられた。 国際共同研究については、2年目に予定していた渡米計画を最終年度に変更し、海外の共同研究者の所属施設(Center of Innovation Research & Rehabilitation : CINDRR)を訪問した。これまでの研究で明らかになった荷重誘導トレーニングの可能性と問題点を共有し、適応患者の病期や下肢機能について議論を行った。荷重誘導トレーニングによって、歩容が変化することで転倒リスクが高まる症例に対しては、virtual reality を用いた歩行シミュレーションの併用が役立つ可能性がある等 新しい研究の視点や荷重誘導トレーニングの実用化に向けた改善点について示唆が得られた。
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