研究実績の概要 |
声や手足など、意思表示に使用可能な器官を一切使用できず、さらに瞼が閉じ、視覚が使用できない状態となった場合でも使用可能な意思伝達装置の開発を行った。 本研究では、装置の使用者の負担を減らすため、頭皮に装着する電極数を3個(電極位置はC3, Cz, C4、またはP3, Pz, P4)とした。当初、事象関連電位P300も使用する予定であったが、意思伝達の所要時間を短縮するために運動イメージ脳波のみの使用に変更した。また、左または右の腕の運動イメージを「はい」または「いいえ」に対応させていたが、正答率を向上させるため、運動イメージを行う場合と行わない場合の2種類の脳波を使用することとした。すなわち、「5秒間の運動イメージの後、5秒間の安静状態(運動イメージを行わない状態)」を「はい」、その逆の「5秒間の安静状態(運動イメージを行わない状態)の後、5秒間の運動イメージ」を「いいえ」に対応させた。このように異なる脳活動を組み合わせることによって、正答率の向上を試みた。実験は、1日1実験とし、1実験当たり「はい」と「いいえ」をそれぞれ50回の計100回実施した。上記の実験を1被験者当たり複数回実施し、その正答率を調査した。その結果、4名の被験者における各最高正答率は、93%、87%、84%、85%となり4名の平均正答率は87%となった。上記の正答率84%、85%の被験者2名については、疲労等の体調の違いによって正答率が変化したが、正答率93%、87%の被験者2名については、ほぼ同様の正答率となった。また、正答率93%の被験者は、運動イメージと安静状態の時間をそれぞれ5秒から3秒に短縮した実験において、正答率が88%となった。本装置は、個人差や体調によって正答率は変化するが、正答率80%台、所要時間10秒前後での意思伝達は可能と考えられる。
|