研究期間の最終年度である今年度は,実際に開発した学習支援機器の評価および本機器を使って学習した場合と一般のイラストを使って学習した場合の違いについて評価を行った.初年度および昨年度までで,学習支援機器としての試作を終えている.本機器はマーカ型の拡張現実を用いており,平仮名が印刷されたマーカを撮影し,指文字の三次元モデルを表示させるが誤認識の問題があり,マーカの特徴量を増やすために幾何学的な フレームで周囲を囲っている.現状で,誤認識はほとんど無くなっている. 機器の評価としては,聴覚障害者の方および手話通訳者に機器を使ってもらい評価を行った.いくつかの改善点が指摘された.1つは,機器とマーカとの位置関係が分かり難いという点であり,これは直ぐに改善できた.2つ目は,三次元モデルの誤りであった.これについては,一部のみ改善できている.高評価だったのは,マーカを追従してモデルが動くので,指文字の向きを誤って覚えることが無いという点であった. 本機器を使った学習に関する評価としては,指文字を知らない健常な男女を被験者として,記憶への定着率という観点で評価を行った.イラストを使った場合と本機器を使った場合で30分間学習し,学習直後と2時間後,翌日の3回に別け,どの程度の指文字を覚えていられるかについて検証した.結果としては,イラストを使った方が単位時間あたりに学習できる指文字のが多く,本機器を使って学習した場合よりも多くの指文字を覚えられることがわかった.しかし,記憶への定着率としては,本機器を使っても同等またはそれ以上という結果が得られ,拡張現実を使い,三次元モデルを使った学習にも一定の効果があることがわかった.
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