研究課題/領域番号 |
15K01492
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研究機関 | 舞鶴工業高等専門学校 |
研究代表者 |
丹下 裕 舞鶴工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (50435434)
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研究分担者 |
片山 英昭 舞鶴工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (30280407)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 視覚障害者 / 電子マップ / 超音波白杖 / 障害物検出 |
研究実績の概要 |
平成28年度は次の課題を実施した.1.超音波白杖の改良 前年度の成果より,移動障害物を検出するドップラーセンサを超音波白杖に実装した.超音波白杖にドップラーセンサを3個実装すれば,前方からの移動障害物が検出できることが分かった.また,超音波距離センサにより測定した実測距離と角度センサにより計算した仮想距離の両データを低域通過フィルタに通すことで,差分量がより明確になり静止障害物の判定が容易になった.健常者ではあるが提案するシステムを利用していただき,使用感等をインタビューした.2.電子マップ配信用サーバの改良 前年度に構築した電子マップ配信用サーバを用いて,視覚障害者が所有する携帯端末から障害物情報を事前通知するシステムを構築中である.3.歩行者用信号器の灯火色認識手法の改良 機械学習を用いることで,信号機の発光部の情報を得られない夜間時でも,灯火色を認識する手法は開発できていたが,今年度は畳み込みニューラルネットワークの分類器の改良を行うことで,約98%まで認識率の向上を図った. 4. 障害物の認識手法の開発 電柱標識板の一部を機械学習の学習画像に用いることで,電柱が含まれる画像において約83%の電柱を認識することができた. また精度に改良の余地があるが,点字ブロック列の消失線情報をもとに,障害物の幅を求めることができた.また上面視画像を用いることで,カメラのキャリブレーション情報なしでも,障害物の高さを推定できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
視覚障害者が所有する携帯端末から障害物情報をアナウンスするシステム作りに時間がかかっているため,視覚障害者団体の協力のもとに運用試験が実施できていない.また,障害物の大きさ情報の取得精度を得ることにこだわったため,固定障害物と移動障害物を区別することまで到達できていない.本申請には記載していないが,カメラ画像撮影地点から障害物の正確な位置を得ることも検討しており,障害物情報をシステム側に提供することが遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は次の課題を実施する.1.検出した障害物情報と電子マップの連動 移動障害物がない環境下において,固定障害物や歩道情報を携帯情報端末のカメラで取得し,本研究で提案するプログラムを実装した画像解析用サーバに送信する.画像解析による障害物検出の後,画像に付加された位置情報を参照し,電子マップ配信用サーバに障害物情報を送信し,電子マップへの反映を確認する.不具合を取り除くことで,サーバの運用試験を実施する.2.全体システムの運用試験とシステムの実証試験 移動障害物を含むような場所において,携帯情報端末のカメラより撮影された位置情報付きの画像を画像解析サーバに送信し,全体システムの運用試験を実施する。また,ユーザベースで改良を加えた超音波白杖と障害物情報を付加した電子マップを連動させ,1つのシステムとして仕上げる.視覚障害者団体の協力のもと,京都府内において本システムの実証試験を実施し,システムの有用性を検証する.また,ユーザへのアンケート調査を実施する.3. 障害物の認識手法の開発 機械学習を用いることで電柱の認識が可能であることを踏まえ,ガードレールなどの固定障害物の認識手法について機械学習を用いて開発する.また点字ブロックの幅を基準にして障害物の幅を求める手法では,精度向上の改善を行うとともに,十分な精度が得られない場合には,基準とする幅を点字ブロックの幅以外とすることを検討する.このことは,夜間時や悪天時などにより,障害物の大きさ推定時に必要となる点字ブロックの幅が得られなかったときの対応ともなる.つまりロバスト性を向上させることができる.また障害物の高さを推定する手法時に得られた上面視情報より,障害物の奥行き情報を得ることも検討する.この手法の欠点として,カメラのブレによる撮影角度の変化に弱いことが挙げられるため,ブレを補正する手法を組み込むことを検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費では,電子マップ配信用サーバから配信される障害物情報を,視覚障害者が所有する携帯端末からアナウンスするシステム作りに時間がかかってしまったため,本来使用するはずであった予算が余った.研究分担者の旅費については,当初学会発表予定であったが,研究の進捗状況の都合により翌年度実施となったため予算が余った.
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次年度使用額の使用計画 |
旅費については積極的な学会や研究会発表をして,研究成果を公表する.平成28年度に購入を検討していたNASについては,研究の進捗が芳しくなかったため購入には至らなかった.最終年度である平成29年度予算を使い,今後の研究に耐えうる容量を持つNASを購入する.これにより,より研究に資するものと考えられる.
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