視覚障害者が,いつでも安全に安心して目的地に移動するためには,固定障害物(壁や階段,ガードレールなど)と移動障害物(人や自動車など)の検出や歩道情報(信号機や横断歩道,段差など)の事前通知が必要とされる.本研究では,これまでに取り付けたセンサー類により静止・動的障害物が検出できるようになった.また,歩道情報の通知のために断続的に携帯情報端末から画像を収集し,サーバで解析するための基礎技術として機械学習による障害物の特定ができるようになった.さらに,手動で電子マップに登録された歩道情報を参照して事前通知するシステムの構築を終えている.最終年度は,構築したシステムの更なる高度化を図った.1.上方向の障害物検出システムの開発 視覚障害者の聞き取り調査において,歩行時において頭上の危険(看板や低い天井,自動車のサイドミラーなど)を心配する視覚障害者が多数存在することが分かった.上方向の障害物検出システムは,下方向障害物の検出原理を応用することで開発した.2.障害物検出のための閾値の決定 白杖を持つ視覚障害者の歩行は,一般的にスライドテクニックとタッチテクニックが使われる.今回は,ノイズの影響が小さいスライドテクニックに着目して実験から閾値を決定した.3.学習画像の枚数の削減 固定障害物や移動障害物を,携帯情報端末のカメラより得られた画像より,機械学習を用いて検出するためには,学習させるための画像収集が重要である.少ない画像枚数で効果的に学習させる方法として,Fine-tuningを採用した結果,学習枚数を大幅に減らすことができた.4.障害物までの距離推定 障害物との距離計測方法として,Monodepthと呼ばれる左右一貫性を有する教師なし単眼奥行き推定手法を採用し,おおよその距離検出を検討した.その結果,3m程度の距離推定ができることが分かった.最終年度までに基礎技術は完成した.
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