研究課題/領域番号 |
15K01493
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研究機関 | 奈良工業高等専門学校 |
研究代表者 |
早川 恭弘 奈良工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (50180956)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 高機能靴 / 歩行訓練 / アクティブ電動歩行器 / 歩行装具 / 空気圧ゴム人工筋 / 圧力分布 / 脳波 / ゴニオメータ |
研究実績の概要 |
1.端末装置に効果的な足裏部・分布圧力提示方法の検討と遠隔操作基礎実験:タブレット端末上に歩行訓練時における足裏部圧力分布のグラフィック及びデータ表示を可能にした.ここで,圧力分布変化が分かりやすい表示方法を工夫した.さらに,タッチパネル操作により無線で高機能靴中敷部要素を加減圧するために,WiPortを用いて遠隔操作でポンプ駆動及び弁の開閉制御実験を行った. 2.中敷部剛性変化要素の最適形状の検討及び高機能靴のコンパクト化:中敷部に配置する加減圧要素の形状変形を的確に患者足裏部に伝え,足部圧力の計測が可能な中敷部構成要素形状を検討した.具体的には,圧力計測用要素を形状変形用要素内に埋め込み,全体をシリコンゴムでコーティングする構造とした.さらに,制御回路の小形化を行うために,プリント基板加工機を用いて基板を小型化し,自立可能なシステム構成を試作した. 3.歩行装具用人工筋の基礎特性実験:ゴム人工筋による歩行装具を設計するために,ゴニオメータを用いて人間の歩行動作解析を行い,ゴム人工筋の仕様決定を行った.そして,ゴム人工筋の加減圧特性及びヒステリシス特性を明らかにした.さらに,Arduinoを用いた拮抗型ゴム人工筋の角度追従制御実験を行った.その結果,ヒステリシスにより応答波形にオフセットが生じることを明らかにした. 4.歩行器の設計と試作:今年度は,既存の歩行器をベースに,2輪電動モータ駆動によるアクティブ歩行器を設計製作した.そして,患者の動きに合わせて歩行器を移動させるために,使用者の歩行速度をモーションキャプチャーから推定した. 5.歩行訓練時における心身ストレスの評価準備:歩行訓練時の患者の不安を定量的に評価するために,脳波測定計測器による予備脳波測定を行った.購入した脳波測定装置は,湿式タイプであることから,実験に際し事前調整を十分に行う必要があることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.端末装置に効果的な足裏部・分布圧力提示方法の検討と遠隔操作基礎実験に関しては,歩行訓練時における足裏圧力分布変化をHMD及び端末タブレットに表示した.HMDへの表示に関しては,被験者の歩行に影響を及ぼさないことが分かったが,歩行時の見易さとしての表示方法をさらに検討する. 2.理学療法士は,タブレット端末を見ながら患者を見守る必要があることから,圧力分布変化が分かりやすい表示方法を工夫した.また,理学療法士がタッチパネル操作により,無線で高機能靴中敷部要素を加減圧するために,ZigBee及びArduinoを用いた遠隔操作による弁の開閉制御実験を行い,動作確認を行った.また,高機能靴のコンパクト化及び安定動作を行うために,計測制御回路の見直しを行い,プリント基板加工機を用いて回路製作を行った.さらに,基板を身体に装着するためには,積層化よりも平板での小型化が有効であることが分かった.中敷き部ゴム要素形状に関しては,効果的な形状を継続して検討する. 4.空気圧ゴム人工筋により歩行装具を設計するために,歩行装具用人工筋の基礎特性実験に関しては,拮抗構造の角度制御性能を調べ,ヒステリシスの影響を明らかにした.また,ゴニオメータにより,歩行時における各関節の回転角度を調べ,歩行装具の設計仕様を検討した. 5. 歩行器に関しては,既存の歩行器をベースに構造(駆動部,機構など)を検討した.そして,被験者の移動速度と歩行器との長さにより,被験者歩行速度に追従する歩行器の試作を行った.また,脳波測定による検証の予備実験として脳波計測方法を習得し,歩行訓練時の患者の不安を定量的に評価するために歩行訓練における脳波測定のタイミングに関して検討を行った.その結果,歩行訓練前後における脳波形の違いを調べることとした. 以上の結果は,当初予定した計画に沿っており,予定通り進んでいると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
1.歩行訓練に効果的な分布圧力提示方法の検証と遠隔操作方法の改良:試作した歩行訓練システム装置を展示会などに出展し,医療現場サイドからの意見を収集し整理することで改良する.また,端末装置と高機能靴の間の通信環境に関して,より簡単に短時間で、かつ経済的にネットワーク接続が可能なWi-Portの使用を検討する.これらの結果より,自宅,屋外においても歩行訓練が可能なシステム構築を検討する.さらに,個人により中敷部に配置する加減圧要素の最適形状が変化することから,突起の有無による効果を継続して調べる.また,要素をカートリッジ式で交換できる構造を検討する.高機能靴の制御回路及び空気圧回路の見直しに関しては,実用化を前提にした小型化を図る. 2.マスター装具及び歩行装具の試作と制御:理学療法士教示用マスター装具及び患者用歩行装具の設計仕様を踏まえ,マスター・スレーブ装具のシステム設計及び試作を行う.制御方法としては,歩行時下肢各関節角度変化をリアルタイムで計測し,マスター側指令値とする.そして,歩行装具をスレーブ側としてティーチング・プレイバック方式により、歩行動作の教示を行う. 3.歩行器の設計・試作:患者の歩行速度に追従して移動する歩行器及び制御システムを改良する.具体的には,歩行装具各関節角速度からヤコビ行列を導出することにより,高機能靴部における速度を計算し歩行器移動速度を決定する.アクティブ・エアサスペンション部に関しては,サスペンション用に最適な構造を検討し試作する. 4.歩行訓練時における心身ストレスの評価:歩行訓練時の患者の不安を定量的に評価するために,筋電位による筋肉の緊張測定と同時に,脳波測定による検証を継続して行う.具体的には, HMD及び歩行装具を装着し,様々な歩行訓練を行った時の脳波及び筋電位を調べ,訓練方法による不安度及び緊張の程度の違いを明らかにする.
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備考 |
日本フルードパワーシステム学会での研究者紹介 http://www.jfps.jp/kenkyusya/y_hayakawa.pdf
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