研究課題/領域番号 |
15K01498
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柳原 大 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (90252725)
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研究分担者 |
舩戸 徹郎 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 助教 (40512869)
青井 伸也 京都大学, 工学研究科, 講師 (60432366)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 歩行 / 運動スキル / 小脳 / ラット / 神経筋骨格モデル / 動力学シミュレーション / シナジー / 脳梗塞 |
研究実績の概要 |
本研究は、歩行運動の際の環境の変化に応じた新たなスキルの発現と獲得における脊髄小脳ループの役割について、ラットを用いた神経生理学的実験と、さらに、ラットにおける神経筋骨格モデルによる動力学シミュレーションの両面から解明することを目的としている。運動スキルを構成する多くの要素のなかで特に運動学シナジーに焦点を当てるが、運動の生成における神経・筋系の冗長多自由度性の問題に対して、実際の運動においては複数の関節が時間的・空間的関係性を保ちながら動くというように、関節間の協調としての運動学シナジーを環境の変化に適応的に、あるいは目的に最適化することにより運動スキルは達成されると考えられるからである。歩行運動時に外乱を定常的に加え、それに対する運動学シナジーの動態を調べるため、本研究では左右分離型トレッドミル、すなわち、左右のベルトが独立に制御されて速度を変えることができるトレッドミルを用いた。 ラットの胴体上体部はハーネスによって支持し、後肢2脚でのトレッドミル歩行において、左右のベルトの速度比を1.5倍、1.7倍、2.0倍と変化させた状態での歩行を計測した。1歩行周期毎に正規化した股関節角、膝関節角、足関節角について特異値分解による解析により、左右のベルト速度が異なる場合、対照としての左右のベルト速度が同じ場合と比較して運動の時間モードに違いが検出された。時間モードに対して、時間窓の幅を変えずに開始点を移動して網羅的に相関係数を調べると、高い相関係数を示す点が認められ、時間モードの違いは位相の変化として表出されていると示唆された。 また、脊髄小脳ループを構成する小脳虫部や中間部に対して微小な脳梗塞を生じさせるために、光反応性色素のRose Bengalを静脈に投与し、緑色レーザーを経頭蓋的に照射するphotothrombosisによる小脳皮質脳梗塞モデルの作製に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歩行運動における関節間協調、運動学シナジーの解析のために、特異値分解を導入し、左右分離型トレッドミルでの歩行運動の特徴として、時間モードの変化、すなわち、位相の適応的な調節が生じていることが示唆された。さらに、photothrombosis法を適用して経頭蓋的に小脳皮質の特定の領域に微小な脳梗塞を誘導する実験プロトコルを完成させた。以上より、順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
左右分離型トレッドミル上でのラットの歩行運動において、小脳正中虫部、あるいは小脳中間部の片側に微小な脳梗塞を誘導し、その後での運動学シナジーの変化を調べる。また、このような小脳機能障害について神経筋骨格モデルにおける動力学シミュレーションにおいても再現できるか詳細に調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
脳の免疫組織化学実験における試薬の購入費用として予定していたが、年度内の納入が不可能だったため未使用額として残った。
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次年度使用額の使用計画 |
未使用額は脳の免疫組織化学実験における試薬のための購入費用として使用する。
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