研究課題/領域番号 |
15K01505
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研究機関 | 山口県立大学 |
研究代表者 |
曽根 文夫 (山崎文夫) 山口県立大学, 看護栄養学部, 准教授 (80269050)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 冷え症 / 温度感覚 / 皮膚血流量 / 局所温度 |
研究実績の概要 |
冷え症とは、通常の人が苦痛を感じない程度の温度環境下において身体の末梢部に強い冷感を自覚するものであり、末梢血管収縮による血行障害が主因であるとされている。冷え症は四肢末端部の強い冷感から生じる苦痛のみならず、不眠、倦怠感、集中力の低下など精神面への影響も大きい。また、冷え症は夏季の学校・職場や各種公共施設の冷房環境により、冬季だけでなく1年を通して発現し、健康状態や生活の質の低下原因となっている。先行研究において、1)室温を低下させて全身を冷却した時の下肢末端部の冷覚感受性が冷え症者の方が非冷え症者よりも高いこと、2)冷え症者では下肢の皮膚冷受容体機能に脱感作が生じていることを示唆した。本年度は冷え症者の皮膚の温度受容機構の特性をより詳細に理解するために、冷覚だけでなく温覚の受容特性や皮膚血管拡張反応について検討した。 対象者は下肢外傷や末梢動脈疾患などの異常のない健康な女子大学生11名であり、実験前に体の冷えに関するアンケートを行って冷え症か否かを判別した。冬季(1~3月)に中性温度環境下(室温28℃)で、以下の2つの局所温熱負荷試験を行った。プロトコール1では、左側の下腿部と足背部の局所の皮膚温を35℃から25℃まで-2℃/分の速度で低下させた後に25℃から35℃まで+2℃/分の速度で上昇させた。プロトコール2では、左側の下腿部と足背部の局所皮膚温を32℃から42℃まで+2℃/分の速度で上昇させ、42℃で10分間維持した。いずれのプロトコールにおいても局所加温時の下肢の皮膚温度感覚および局所皮膚血管拡張反応は冷え症者と非冷え症者との間で明らかな違いが見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験はほぼ予定通りに実施できている。
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今後の研究の推進方策 |
局所加温時の下肢の皮膚温度感覚や皮膚血管拡張反応は、季節変化の影響を受ける可能性があるために、冬季だけでなく夏季にも同じ実験を行って冷え症者の温熱生理学的な特徴を明らかにする予定である。 温度感覚に関する生理心理学研究において、「冷え」の感覚はリッカート尺度やビジュアル・アナログスケールなどによって数値化されている。しかしながら、これらの言葉や視覚による感覚尺度は、言葉の意味がその対象や場面によって異なること、評定段階の使い方も人によって異なること、などの理由によって生理的測定値よりも誤差が生じやすいと考えられる。したがって温度感覚の評価や冷え症を判別するための生理学的指標の開発が強く望まれる。この問題を解決する端緒として、局所皮膚温度刺激中に非侵襲的な脳機能評価法(脳電図法や近赤外線分光法)を用いて脳活動の変化から冷え症を判別可能かどうかについて検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入予定であったデータ入力装置(37万円)よりも温度感覚を数値化するためのスライドスイッチ(27万円)を優先的に購入する必要が生じた。差額の10万円は次年度購入予定の近赤外線分光装置の購入資金の一部として使用する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
近赤外線分光装置(制御用パソコン含)を購入するための備品費として250万円、電極、テープ、熱電対などの実験消耗品費として3万円、27年度の研究成果を盛岡市で開かれる日本体力医学会で発表するための旅費として10万円、被験者への謝礼および英文校正費などの謝金として6万円、その他の経費として1万円(合計270万円)を直接経費として使用する計画である。
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