研究課題/領域番号 |
15K01508
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
上林 清孝 同志社大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (70415363)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 歩行 / 電気刺激 / 筋電図 / 経頭蓋磁気刺激 |
研究実績の概要 |
神経リハビリテーション領域における研究進歩により、歩行機能障害者に対して歩行の再獲得を目指した積極的なトレーニングが実施されている。近年、動物実験では体重を免荷した歩行トレーニングに加えて、脊髄神経細胞などの神経系に対して電気刺激を与えることで、可塑的変化をより促そうとする研究が進み、その効果が示されている。ヒトへの応用に向けてはヒト被験者による研究が必要となることから、本研究では、ヒトの歩行時に非侵襲的な電気・磁気刺激を運動野、感覚神経、筋のいずれかに付加し、神経路の興奮性に及ぼす効果を調べることを目的としている。そのため、歩行時に刺激を付加し、その前後で、大脳の運動野から脊髄運動ニューロンへつながる皮質脊髄路の興奮性や脊髄反射経路の興奮性を調べ、神経路の興奮性変化を評価することで可塑的変化を推察する。 本年度は、健常成人を対象とし、外部刺激として前脛骨筋の支配神経である総腓骨神経に対して、経皮的に電気刺激を与えた。運動閾値以上の刺激では背屈動作が引き起こされることから、歩行動作を支援する刺激タイミングとして、遊脚初期もしくは接地直前に刺激を与えた。刺激強度は安静時にわずかな筋収縮が生じる程度とし、歩行の前後で前脛骨筋に対する皮質脊髄路の興奮性やヒラメ筋のH反射変化を調べた。その結果、総腓骨神経への刺激によって歩行後に経頭蓋磁気刺激(TMS)による誘発電位の増大が数名の被験者で観察され、皮質脊髄路の興奮性増加が推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は健常成人にて、総腓骨神経への単発電気刺激を歩行中に与え、神経路の興奮性を歩行の前後で比較し、予定した研究はおおむね順調に進展した。また、空気圧による浮力で体重を免荷できるトレッドミルを用いた歩行でも計測を行い、外部刺激付加とは逆に、荷重関連の感覚情報が低下した場合に生じる筋活動変化についても検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
歩行中に付加した刺激タイミングによって、誘発される筋収縮の大きさが異なることから、刺激タイミングに応じて刺激強度を調節してさらに詳細に検討する必要がある。そこで、これまでと同様のプロトコルにて、次年度は感覚神経への電気刺激の大きさを変化させ、神経路の興奮性変化を調べることとする。また、単発刺激ではなく、パターン化された連発電気刺激を適用することでより強い効果がみられるかを検証する。 その他、歩行中の複数の筋から計測した筋電図について、主成分分析から筋活動パターンを刺激付加の前後で解析し、筋シナジーにおける変化を検証する。これらの結果から、筋活動パターン生成に関わる神経機構に対する外部刺激の影響を考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
歩行中の足部接地から一定のタイミングで経皮的電気刺激を与えるために、外部入力でトリガースタートが可能な電気刺激装置の購入を予定していたが、ソフトウェア上でトリガータイミングを制御することで刺激が可能となったため、装置の購入をとりやめ、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
初年度の研究成果を国際学会で発表する際の旅費として使用する予定である。
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