研究課題/領域番号 |
15K01511
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
佐藤 徹 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (80125369)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 運動指導 / 動感 / 運動発達 / 志向性 / 現象学 |
研究実績の概要 |
研究2年目となる平成28年度は、資料収集や問題設定のための観察活動に加えて、研究の照準を定めるための問題点の抽出を重点的におこなった。そのための資料として、幼児や小学校低学年の子どもの運動行動についてビデオ撮影を行った。対象は、おもに本学で開催している子どものためのバルシューレ(ボール運動教室)で行っているスポーツ種目横断型基本運動である。ボールを投げたり蹴ったりするボール操作に関する外的運動経過の観察だけでなく、さまざまな行動の中で現れる、状況に応じた運動感覚能力(キネステーゼ、動感)について注目した。今後、この資料は、以前に論文として体育学研究に発表した「運動発達査定における動感志向性分析の意義」で明らかにされた動感志向性の発達という視点から分析していくことになる。なお、今後も同様の資料は継続的に収集していく。 また、昨年度であるが、本研究に関連する研究論文として「創造的コーチング研究のために一事例から理論へ一」がコーチング学会研究誌に掲載された。これは、運動を指導する(コーチング)ために必要な情報は、従来のような物理的測定値に基づくのではなく、運動を実施している人間の動感志向性の理解に基づくべきであるという主旨の内容である。つまり、本研究のテーマである「運動指導に直結する」情報の取得の仕方についてまとめたものであり、本研究の骨子を形成するものである。これによって、本研究の方法論的方針が確立されたことになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に引き続き、子どもの動感(キネステーゼ)を観察できる情報収集の場が確保され、必要なビデオ撮影も順調にでき、研究に必要な資料が入手できたことは成果としてあげることができるが、その成果を論文としてまとめることができなかったため十全な結果とは言えない。 子どもの運動行動は恣意的、散発的なものがおおく、計測的研究手法では指導実践に有用な資料はえられないことから、実践経験の豊富な指導者の観察眼を持った研究者が、動感論的視点から観察し、価値論に基づきながら行動の意味を解釈していく考察法が求められる。この点が、従来の自然科学的研究法とは本来的に異なる特徴である。 このような研究対象の特性を踏まえたうえで、子どもの意味ある運動行動のなかから運動発達にとって本質的な特性を現象学的方法に準拠して直観していくための方法論、いわゆる現象学でいう本質観取を取り入れる目処がついたことはひとつの成果である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度から続けている、子どもの運動行動のビデオ撮影など、研究に必要な資料の収集はさらに続けていく。とくに今年度は、これまでに取得した資料について現象学を理論的基盤とした動感論的視点から実施者の志向分析を進める予定である。また、子どもの運動発達に関する実践的理論に関する研究者であるドイツ・ハイデルベルク大学のロート教授と緊密な連携を取り、指導実践に有用な情報の共有を図るつもりである。
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次年度使用額が生じた理由 |
職務上の都合により、予定していた学会発表ができなくなり、旅費等に余剰が出た。また、ビデオ撮影用の機器、および映像分析用ソフトウェアも機能的に十分なものとはいえなかったため購入を延期した。
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次年度使用額の使用計画 |
共同研究を進めているドイツ・ハイデルベルク大学のロート教授と一層の発展をめざすために訪問し、研究を実施するとともに、必要な研究資料を入手する予定である。また、なるべく多くの研究学会に出席し、研究成果を発表する予定である。
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