研究課題/領域番号 |
15K01515
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
鈴木 直樹 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (60375590)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 教育実習 / 国際比較研究 / 教師の成長 / 教育実習生 / 体育・保健体育 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、平成27年度に収集した教育実習のシステムに関するデータと、教育実習を指導する現職教員(以下、メンター)と教育実習生のインタビューを整理して研究発表を行った。 教育実習のシステムでは、質問紙調査によって得られたデータを整理して比較検討を行った。その結果、アジア圏、ヨーロッパ圏、米国という地域間において教育実習の期間や頻度など、その実施形態に大きな違いが見られた。また、地域に関係なく、共通してメンターの育成に対して積極的な取り組みは見られず、大学教員も積極的に教育実習には介入していないことが明らかになった。米国などでは、大学で教育実習の振り返りを設定しているところがあるものの、教育実習の取り組みに対しての直接の介入やメンターの育成に対する研修などはなく、学校現場と大学の間の連携は希薄であることが明らかになった。 このような状況下において、メンターの教育実習生に対する態度がどのように生まれているのかを、インタビュー調査を手掛かりとして分析し、教育実習の違いのある国の間で比較を行った。その結果、教育実習の方法に影響を受けているというよりは、教育実習に対する考え方に強い影響を受けていることが明らかになった。すなわち、教育実習に対しての意義や目的などを含めたメンターの考え方が強く影響し、教育実習における実習生のかかわりに影響をしていることが明らかになった。このことは、学校現場でメンターとして指導にあたる教師側の認識によって、教育実習が学びにもなりえるし、単に仕事として終わってしまうことを暗示しているといえた。 以上のことを踏まえ、対話的にメンターも教育実習生と共に成長できている背景にあるシステムを解明することが課題となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実施予定であった長期に渡るフィールドワークが実施できなかったことが「やや遅れている」と評価した理由である。しかし、すでにフィールドワークの実施は計画できており、それと並行して、研究成果を踏まえた教育実習システムの実証的研究に取り組む予定であり、研究上の問題はない。
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今後の研究の推進方策 |
教育実習システム構築にあたり、その方法の提供だけでなく、その意味や目的の設定からメンターと実習生、大学教員が協働していく必要性が示唆された。そこで、このようなことを手掛かりとして、教育実習に向けての事前指導、教育実習、事後指導を強く関連させ実証的な研究に取り組んでいきたいと考えている。また、教育実習の取り組みとしては、成長を促す対話的な教育実習を実践するための、システムを作動させる仕組みを工夫し、実践に取り組み、その開発と検証に取り組んでいきたいと考えている。これは、9月に実施される附属学校での教育実習で実証していきたい。 また、対話的な教育実習の中で成長するメンターの成長プロセスについてフィールド・ワークによって解明していきたいと考える。その為に、これまでの研究で明らかになった視点から対話的な教育実習の取り組みの一つと考えられる豪州と米国の事例を取り上げて2週間から3週間のフィールドワークを実施し、教育実習という文脈の中におけるメンターと教育実習生の成長を見出していきたいと考える。 このような研究から、メンターが成長できる教育実習システムの提案を行い、教師教育における教育実習の位置づけのみならず、教員研修としての教育実習を確立していきたい。そのことによって、現職教員にとっての教育実習の位置づけが変化し、実践的な教員養成の場と実践的な教員研修の場が密接な関連を持ちながら発展していくことができると考えている。 そのためにも、研究で明らかになったことを積極的に全世界に向けて発信していくことができるように、国際学会や国際学術誌において研究発表を行っていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
長期間に渡るフィールドワークの実施ができなかった為に、旅費の支出がなかった為。
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次年度使用額の使用計画 |
9月に豪州のメルボルン大学で支援を受けながら、現地の学校で教育実習のフィールドワークを実施予定である。
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