本研究では、世界各地の教育実習システムを質問紙調査し、整理した。その結果、アジア圏、ヨーロッパ圏、米国という地域間において教育実習の期間や頻度など、その実施形態に大きな違いが見られた。また、地域に関係なく、共通してメンターの育成に対して積極的な取り組みは見られず、大学教員も積極的に教育実習には介入していないことが明らかになった。米国などでは、大学で教育実習の振り返りを設定しているところがあるものの、教育実習の取り組みに対しての直接の介入やメンターの育成に対する研修などはなく、学校現場と大学の間の連携は希薄であることが明らかになった。 以上のことを踏まえ、対話的にメンターも教育実習生と共に成長できている背景にあるシステムをインタビュー調査によって分析、整理を行った。そして、研究内容を整理し、受け入れる教師側が成長する機会となる為の教育実習プロセスを6段階でモデル化した。これを導入した結果、メンターと教育実習生の間に学び合う関係性を創り出すことにつながり、メンターの成長に寄与することを理解することができた。とりわけ、このような取り組みによって教育実習生のメンターに対する尊敬度合いが非常に高まったことが、インタビューから理解でき、大変興味深く感じられた。 平成30年度には、そのモデルについて、東京学芸大学大学院の春学期の授業で講義内容の一つとして提供し、学生たちの協議の題材とした。また、10月には米国・ニューヨーク州にあるニューヨーク州立大学コートランド校とマサチューセッツ州にあるブリッジウォーター州立大学の2大学で研究で明らかになった教育実習モデルの提示を行い、それを活用した教育実習の成果について具体的なデータを元に説明することによって、高い評価を得た。さらに、成果発表を受けて、今後の課題を整理し、研究の新たな方向性について明らかにすることができた。
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