研究課題/領域番号 |
15K01517
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
石垣 健二 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (20331530)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 現象学的方法 / 間主観的アプローチ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、体育学独自の研究方法として「間身体的アプローチ」を構想し、その方法を具体的に明示することである。「間身体的アプローチ」は、妥当な仕方で他者の身体(身体性)を理解する方法であり、理性的・知性的認識とは異なった身体的認識方法となるだろう。 本年度の研究実施計画としては,ⅰ)体育学の研究方法論の検討,ⅱ)哲学および心理学における認識論の検討,およびⅲ)教育学および教育哲学における自他関係論の検討,が予定された. ⅰ)に関連し,次のことが明らかとなった.体育学における自然科学的な研究方法は,確かに身体運動を客観的に説明するが,実践者が経験している「身体運動それ自体」を語り得ないのであり,個人的(主観的)な方法が模索される必要性がある.体育学において実践者の立場を尊重する方法としては,「モルフォロギー的研究法」や「体育学としての現象学的方法」があるが,本研究では,これらの方法を改変し「他者の身体運動」の分析に応用することが必要となる.またⅱ)に関連し,次のことが明らかとなった.「現象学的方法」について検討した結果,それらの方法は「事象そのものへ」と遡及するために,「現象学的還元」「形相的還元」「反省(記述)」などを手続を必要とする.今後これらの方法を,「他者の身体運動」の分析に応用することがもとめられることになる.ⅲ)に関連する事柄では,発達心理学等で方法化されている「間主観的アプローチ」について,検討された.本質的にはわかり得ない「他者の主観性」へと辿り着くために,やはりそこでも「現象学的方法」が適用されていた.今後,「間身体的アプローチ」を構想するためには,他者の「主観性」にではなく「身体性」に焦点化する方法論が構想される必要がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究初年度は,ⅰ)体育学,ⅱ)哲学および心理学,ⅲ)教育学および教育哲学の領域から,それぞれ研究方法論に関わる文献の精読・検討が予定されていたが,特に現象学の方法論の難解さが原因となり,その理解に予想以上の時間が要された.今後,引き続き,解説書および関連分野の講読をすすめ,その精確な読解が必要になるだろう. 一方において,発達心理学における「間主観的アプローチ」については,その概容が明らかになってきた.さらにその研究方法論の中核を活かしながら「間身体的アプローチ」を構想してゆくヒントが得られないかと期待している.
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今後の研究の推進方策 |
今後も,引き続き文献収集とその読解を中心にしておこなう必要がある。というのも、特にⅲ)哲学および心理学における「現象学的方法」や「間主観的アプローチ」は、複雑な方法手順とその難解さゆえにいまだ様々な議論が絶えない状況にある。それを考慮するならば、その本質の解読・抽出には相当な時間が要されるはずである.近年においてはそれらの解説書も順次刊行されているので、それらを順に検討してゆかねばならない.同様にして、ⅱ)教育学および教育哲学における質的研究方法にも焦点化して,その方法論が探られる必要があるだろう.さらにはⅰ)体育学においては、運動学等の方法やその他の質的研究法を適用する具体的手続について,順次構想していく必要がある. 今後も,引き続き関連諸学会に参加し,上記の内容について同領域研究者に内容の妥当性について評価を得たい.前年度は,本務大学の業務と重なり国際学会および国内関連諸学会での発表の機会がなかったが,今後は積極的に活用するつもりである.また同時に,学会の学術論文誌に積極的に投稿することによって,研究の内容を公表したい.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた最大の理由は,調査研究のために予定していた「国際スポーツ哲学会(カーディフ,英国)」および国内関連学会への参加が,本務大学の業務のため遂行できなかったことによる.また,前者にともない,英文校正・翻訳(謝金)も使用されなかったことが起因している.
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度分として繰り越された助成金は,本年度中に,ライプチッヒ大学(ライプチッヒ,独)で調査研究をするための国外旅費として使用するつもりである.というのも,今後マイネルの運動学について,詳細な検討が必要になると考えるからである.
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