本研究の目的は、体育学独自の研究方法として「間身体的アプ ローチ」を構想し、その方法を具体的に明示することであった。間身体的アプローチは、妥当な仕方で他者の身体(身体性)を理解する方法であり、理性的・知性的認識とは異なった身体的認識方法になると予想された。 研究初年度には、体育学における自然科学的研究方法をを批判的に検討するとともに、哲学における「現象学的方法」の適用可能性について吟味しながら、「他者の身体運動」に対する分析の応用が吟味された。また発達心理学等で方法化されている「間主観的アプローチ」について検討した結果、「間身体的アプローチ」を構想するためには,他者の「主観性」にではなく「身体性」に焦点化する方法論が構想される必要性を説いた. 研究2年目には,引き続き「他者の身体運動」を分析する方法の検討がされ、他者の身体運動を「見る」ということに焦点をあてながら、運動実践者あるいは運動観察者の経験を忠実に記述する方法が吟味された。それと同時に,間主観的アプローチを詳細に検討することによって,その限界と質的研究としての可能性が探られた。 研究3年目には、体育学における「モルフォロギー的研究法」や「体育学としての現象学的方法」の限界を指摘するとともに、現象学的方法をより具体的に「現象学的還元」「形相的還元」「反省・記述」の要素として捉え直したうえで、体育学の研究方法へと適用することが検討された。 研究最終年では、体育学独自の研究方法としての「間身体的アプローチ」がどのような方法であるかが具体的に構想された。結果として、体育学の方法を補う形で、現象学的方法および間主観的アプローチを変形して適用する方法が6つの視点から示された。
|