研究課題/領域番号 |
15K01519
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
福本 まあや お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (10464033)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ソマティクス / ボディワーク / 舞踊教育 / 米国教育基準書 / 体ほぐしの運動 / awareness / 気付き |
研究実績の概要 |
本研究は「体ほぐしの運動」の背景と言われているソマティクス理論をいかに学校教育に適用し得るかを検討するもので、具体的には米国の舞踊教育団体(NDEO)が制定した舞踊教育基準書(NDEO基準書)に、ソマティクスの理論や実際がどのように反映されているかを読み取り示唆を得ようとするものである。 当該年度は、ソマティクス適用の具体例を確認すべく、米国ノースキャロライナ州内の高校1校の舞踊授業の視察および教員へのインタビューを行った。加えて基準書が想定する舞踊教育の現場について理解を深めるために、NDEO全国大会やテキサス州内の高校3校の視察ツアーへの参加等を行った。 前年度に浮かび上がっていた「ソマティクス」という語の多義性と曖昧さをめぐる問題については、米国の研究者らとの意見交流を通して、米国の舞踊教育研究者の間でも同様に問題となっているということが確認された。本研究の目的にふさわしいソマティクスの成分の抽出方法を検討し、NDEO基準書執筆に関わった研究者に会い情報収集に努めた。結果としてはNDEOジャーナル(2001-2017)におけるソマティクス関連研究19件のレビューを行い、そこから複数のボディワークを想定しながら舞踊教育への摘要を試みている先行研究3件(Green 2002; Brodie and Lobel 2004; Batson and Schewartz2007)に参照枠を求めることが妥当と判断した。これら3件の研究において「何に気づき(awareness)をフォーカスするのか」「どうやって気づきをフォーカスするのか」「ソマティクスを適用することで期待される学習経験」に相当する語句を抽出し、それらの語句群をソマティクスの成分を同定する上での参照枠として用いながら、NDEO基準書の達成基準の項目説明を読み解く作業を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は当初3年計画であったが、初年度の所属先異動、2年目に米国の学校視察のための日程調整に予定外の時間を有したこと等により、期間を1年延長し4年計画で進めることとなっている。平成29年度はその3年目にあたる。平成29年度は前年度に計画した実地調査を予定通り進め、現地研究者との交流を通して米国の舞踊教育の現状について理解を深め、これらの知見に基づいて対象とするNDEO基準書の概要とソマティクス成分の抽出を行い、その結果を論文にまとめる作業を予定通りに進めることができた。以上の理由により進捗状況はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
当初の目的にあるソマティクスの成分の抽出作業は既に完了し論文としてまとめ投稿中であり、学会誌掲載に達する基準となるよう査読者の指摘に基づき推敲を重ねてゆくことが次年度の作業の一つとなる。 加えて平成29年度に実施した現地調査の結果を資料化し、28年度の結果資料と合わせて米国の舞踊教育の状況を報告する論文としてまとめ、学会大会にて発表を行うほか研究資料として投稿するなど公表に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
受給開始の平成27年度に大学所属が変更したことで、学生の引率出張など研究以外の新規業務が増加したことが、研究計画全体の遂行に遅れが生じた主な理由である。加えて平成28年度に米国の学校視察の受け入れ教員との日程調整が難航し、29年度にその現地調査を持ちこすこととなった。平成29年度は概ね順調に作業を進められたが、対象とする基準書の概要とソマティクス成分の抽出結果を論文にまとめる作業を優先したため、同年に行った調査結果を含む米国の舞踊教育の現状を報告する論文を学会等で発表することは日程的に困難となった。次年度使用額は29年度の実地調査結果を資料化する際に必要となる経費や、成果公表の際に必要となる学会大会参加費や旅費、論文投稿費用等に充当する計画である。
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