研究課題/領域番号 |
15K01521
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
中村 和彦 山梨大学, 総合研究部, 教授 (80217835)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 基本的な動き / 観察的評価システム / 体育科教育 / 多様な動きをつくる運動(遊び) / 動きの洗練化 |
研究実績の概要 |
平成23年4月より完全実施された現行の小学校学習指導要領「体育」においては、今日の児童の体力・運動能力の実態を鑑み「体つくり運動」を全学年に設定し、低学年では「多様な動きをつくる運動遊び」、中学年では「多様な動きをつくる運動」で構成された授業が実施されている。平成30年に予定されている次期学習指導要領の改訂に向け、現行の学習指導要領の評価のためには、児童の基本的な動きの洗練化を観察的に捉え、ねらいにあった授業の展開を支援できるような評価システムの開発が急務である。 そこで本研究では、動作発達学の研究成果を踏まえ、効果的な小学校体育の授業実践ための、児童の基本的な動きの洗練化を目指した観察的評価システムを研究開発することを目的として研究を進めている。 平成27年度には、「児童の基本的な動きの習得状況の把握」と、「基本的な動きを観察的に評価するための評価基準の作成」を実施した。 「児童の基本的な動きの習得状況の把握」においては、東京都内の小学校の1年生から4年生までの児童を対象とし、児童の基本的な動きを、デジタルビデオカメラを用いて撮影した。本研究において設定する基本的な動きは、小学校学習指導要領解説体育編の「多様な動きをつくる運動(遊び)」に例示として提示されている基本的な動きをもとに、体育の授業実践場面に多く出現する基本的な動きとした。特に平成27年度においては、<力試しの運動(遊び)>に例示されている基本的な動きを中心に観察し、その習得状況の撮影を行った。 「基本的な動きを観察的に評価するための評価基準の作成」については、撮影収集した基本的な動きの身体部位別・運動局面別の動作カテゴリーを抽出し、その動作カテゴリーの組合せによって、基本的な動きの発達過程を明らかにし、観察的な評価のための評価基準を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
基本的な動きの中で、「渡る」「回る」「走る」「跳ぶ」「登る」「投げる」「捕る」「なわを跳ぶ」「はねる」「回す」「蹴る」の11種類の基本的な動きに関しては、宮丸(1973・1987)、研究代表者(1986・1988・1990・2011)によって発達過程が明らかにされている。したがって本研究においては、上記した基本的な動き以外の「登る」「押す」「引く」といった<力試しの運動(遊び)>に例示されている基本的な動きの習得状況の撮影を行った。 撮影収集した基本的な動きを観察的に評価するための評価基準の作成にあたり、平成28年度における研究計画としていた評価基準の妥当性、信頼性、客観性の検討の一部について、前倒しして実施した。特に、評価方法の評価として重要視されている、複数の観察者による同一対象児童の基本な動きの評価結果の比較による客観性の検討を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度においては、評価基準の妥当性、信頼性、客観性の検討と基本的な動きの観察的評価システムの開発を中心に、これまでに作成された評価基準に関して、評価方法の評価を実施する予定である。具体的には、評価結果の正規性の検定、動作様式の経年的な変容による妥当性、複数回の動作遂行の実施によって出現した動作様式の比較分析による信頼性、小学校教諭による同一対象児童の基本な動きの評価結果の比較による客観性の検討から、基本的な動きの洗練化を目指した観察的評価システムの開発を目指す。 平成29年度には、当初の研究計画通り、「体育の授業への基本的な動きの観察的評価システムの導入」と「デジタル教材のツールとしての提案と検証」に関して、研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該助成金は、データの撮影及び保存に関わる消耗品、及びデータ処理及び解析に関わる消耗品、データを保管するハードディスク等が、今年度の使用予定額を下回ったため生じたものである。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度において、観察的評価システム開発に伴う評価基準の妥当性、信頼性、客観性の検討と、体育授業への評価システム導入について研究を進める上で、平成28年度内に使用する予定である。
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