研究課題/領域番号 |
15K01523
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
田中 雅人 愛媛大学, 教育学部, 教授 (70207140)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 主観的情報 / 感覚的情報 / 言語教示 / 力学的変数 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、時間的・空間的物理情報に加え、床反力、重心変位などの多様な力学的変数を測定することによって、主観的・感覚的情報が動きの制御に果たす役割を明らかにすることであった。 そこで、本年度は、昨年年に引き続き、大学生を実験参加者とし、符号化された主観的・感覚的情報が動きの調節にどのように関連しているのかを検討するための実験を行った。実験参加者は、ディスプレイに表示されたことばをイメージし、正面のLEDが点灯したら、その場で1回、垂直方向に跳躍動作を行った。呈示することばは、「しっかり」、「かるく」、「たかく」、「ゆっくり」、「なめらかに」、「やわらかく」、「しずかに」などの18のことばとした。実験参加者の右側方にビデオカメラを設置し、跳躍動作を30コマ/秒で撮影した。計測点は、右大転子、右膝、右足首、右つま先とし、デジタイズを行ったのち、解析プログラム(DKH社:Frame-DIAS V)を用いて動作分析を行った。 時間経過に伴う膝関節角度の変化を求めたところ、「ちいさく」「すこし」「かるく」「さっと」では、個人差が大きくなる傾向が認められた。さらに、大転子の位置の変化からは、離床前の動作に違いが現れることが明らかになった。これらの結果から、符号化された主観的・感覚的情報の受け取られ方は、多様であり、言語的な情報における伝達の困難さが示唆された。なお、難易度の評価は、空間的調節に関することばで低く、「ゆるやかに」「なめらかに」「かろやかに」「やわらかく」などの動きの円滑さを表すことばで高くなる傾向がみられた。これらの結果から、主観的・感覚的情報と客観的な力学的変数、すなわち心理的事実と物理的事実の関係を分析することの重要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、動きを調節するための主観的・感覚的情報を言語的コードとして抽出するための実験を行い、その結果を参考に視覚イメージを形成するための動画を作成する計画であった。 まず、20名の大学生を対象に、動きを調節するためのことばを呈示したのち1軸ストレインプレート上で跳躍動作を行わせ、跳躍高、接地時間、床反力などの力学的変数を計測した。呈示したことばと力学的変数とを関連性を分析した結果、空間的調節、時間的調節、力動的調節に関わることばの特徴が明らかになった。 次に、実験の結果に基づいて、視覚イメージを形成するための動画を作成する計画であったが、ビデオ撮影した実験参加者の動作分析がまだ終了していない。 研究は、予定よりもやや遅れているが、速やかに動作分析を終え、実験で使用する動画の作成に取りかかる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、動きを制御する主観的・感覚的情報と力学的変数との関連性を検討するための実験を行う。 大学生を実験参加者とし、2つの条件(条件1:言語教示を受けたのち、課題の動きを行う、条件2:今年度の実験で作成した動画を観察したのち、課題の動きを行う)で課題を行い、力学的変数の計測と主観的・感覚的情報の調査を行う。 力学的変数の測定は、1)床反力、跳躍高、接地時間、滞空時間、重心変位。2)関節角度、3)空間的・時間的物理量(頭頂、肩、肘、指先、大転子、膝、つま先を計測点とし、各部位の移動距離や軌跡、各動作局面に要した時間を測定)とする。 主観的・感覚的情報の調査は、田中(2014)が作成した動きの印象を定量化するための心理的指標を参考に、感性語(例えば「おおきい」「ゆっくり」「なめらか」など)に対する数値的等級(例えば、「とても強い、強い、弱い、とても弱い」)を設けた評定項目を作成し、各課題で動作を行った直後に実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費:予定していた3回の学会参加のうち1回が不参加となったため、旅費の支出が予定していたよりも低額となった。 人件費・謝金:実験でのデータ収集が予定していたよりも短期間で終了したこと、さらに、データ分析、および実験の一部を次年度に延期したことから、実験補助者への人件費の支出が予定していたよりも低額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費:データ処理をより効率的に行うためにパーソナルコンピュータを購入する。 旅費:日本体育学会(9月)、日本スポーツ心理学会(11月)等の関連学会で研究成果を発表のために旅費として使用する。 人件費・謝金:ストレインプレートおよびゴニオメータによる計測を行う際の実験補助者に対する人件費として使用する。さらに、ビデオ撮影した映像を動作分析するためのデジタイズおよびデータ処理を行う際の人件費として使用する。
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