「身体表現・ダンス教育による接続カリキュラム構築」を研究目的とし、イタリア、レッジョ・エミリア市での芸術教育および保幼小連携の状況を明らかにした。市の教育機関であるSEIは幼小を接続する機関として、市内の複数個所に設置され、誰もが必要に応じて利用でき、マラグッチセンターとも連携を図っている。複層的に子どもが選び、ニーズに応じて対応できるような工夫が市全体として取り組まれていることが提示された。 また、ドイツのアウグスブルグの「森のようちえん」2か所について、観察と取材許可をいただき、具体的に子どもたちと一緒に活動し、参与観察を行った。2園は全く異なるタイプの指導者によって運営されており、比較検討し、幼小接続に必要な子どもたちの育ちを考察した。日本において「森のようちえん」の卒園児の接続の難しさが指摘されている。しかし、新学習指導要領で求められている「主体的、対話的、深い学び」は「森のようちえん」では日常的に実践されており、そこから小学校での学習形態へどのように繋いでいくべきか、また、放課後児童クラブの活用の有効性を指摘することができた。 最終年度は、アウグスブルグの「森のようちえん」の園長、教諭、表現指導者に対し、遠隔システムでインタビュー調査を実施した。その結果、幼児期は十分に体を動かし、子ども自身が発見し、工夫し、感覚を磨き、友達と協力して遊びこむ活動を通すことが重要だと認識していた。こうした考え方は日本の現状とも共通の方向性である。子どもたちは自己有能感を高めることによって、小学校教育においても十分に自分の力を発揮し、学習意欲へも繋がっていると指摘していた。さらに、ドイツでは就学年齢に達していても、発達に課題がある場合には、就学せず、幼稚園に留まることから、課題を抱えている子どもと保護者に対しては、手厚い支援と相談体制が組まれており、参考にすべきであると指摘する。
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