中学校武道授業の実施状況および学習面又は行動面の困難さを示す生徒への配慮・支援を明らかにすることを目的に、中学校保健体育教員に質問紙調査を実施し、回答の得られた107件について分析した。 武道授業の実施学年は1学年と2学年で8割以上、実施種目は男女とも柔道が最も多かった。1クラスの平均生徒数は「31~40人」が全体の8割を占め、1クラスの指導者数は7割弱が「体育教員1名」であった。「外部指導員」の配置は7.5%、「支援員」の配置は3.5%と少なかった。武道授業を実践する上で困難を感じるとの回答が最も多かったのは「指導内容」(57.3%)であり、次いで「指導体制」(40.4%)、「用具の整備」(36.0%)であった。「指導内容」の内訳は、「指導内容(技能)」が64.7%と最も多く、次いで「指導内容(思考力・判断力・表現力)」が41.2%、「成績評価」が23.5%であった。 すべての生徒に分かりやすい授業のために行っている配慮について最も多かったものは「学習ルールを決めておく」(52.3%)、次いで「ペア学習やグループ学習を取り入れる」(47.7%)、「授業の流れを一定化する」(43.9%)であり、ユニバーサルデザインの授業作りの共有化の視点が多く取り入れられていることが明らかとなった。 学習面又は行動面で課題があり配慮を必要としている生徒については、58.9%の教員が「いる」と回答し、特に、柔道では有意に高かった。柔道固有の動きの指導において安全面の指示の理解が課題となることが推察された。内訳では「発達障害」27.5%、次いで「身体障害」24.6%、「発達障害の傾向」14.5%となっていた。宗教上の理由やLGBTなどの「障害以外の特別なニーズ」についても11.6%出現していた。障害による特別なニーズを含め、非常に多様な生徒を対象に武道授業を実施している実態が明らかとなった。
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