研究課題/領域番号 |
15K01527
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研究機関 | 流通経済大学 |
研究代表者 |
福ヶ迫 善彦 流通経済大学, スポーツ健康科学部, 教授 (20398655)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 保健体育科 / 熟練教師 / 実践的思考様式 / 実践的知識 / ゴールイメージ / 思考・判断力 / 信念 |
研究実績の概要 |
体育授業の行動科学的研究によって,よい体育授業を生起する条件は明示された。すなわち,よい体育授業は,学習に勢いがあり,肯定的な雰囲気で学習が展開されている(高橋,2000)。このような学習者の行動を生み出すために,教師は多くの教授方略と教授技術を発揮している(福ヶ迫,2013)。本研究は,実践的な諸問題の表象と解決の思考活動において,教師はどのような性格の知識を活用し,どのような思考様式を機能させているか,熟練教師の授業のモニタリングを比較し,熟練教師の保有している実践的知識の特質とそれを基礎として展開される実践的な思考様式の性格を解明することを目的とする。今年度明らかになった点は次のとおりである。①保健体育教師への生徒の信頼は,「効果的な授業づくり」「相互作用」「規律・規範」「肯定的な雰囲気」「対話」の5因子で解釈できた。②各因子は,相関関係にある。③教師への信頼は,形成的授業評価と運動有能感に影響を及ぼす。④信頼は,教師の授業への取り組みや授業外での関り方に関係する。⑤教師の信頼は,授業の基礎的条件(学習の勢い,肯定的な授業の雰囲気)を整えることに関係すると推測できる。⑥熟練教師は,授業過程において即興的で,即時的に豊かな思考をしている。⑦熟練教師は,自身の授業を記憶し,授業中に省察しながら,授業後に改めて省察し,次時への計画を立てている。⑧熟練教師は,指導性の発揮の仕方へ強い関心を持って省察している。⑨熟練教師は,自身の授業を独自の視点で批判的に省察する習慣が備わっている。上記の成果は,保健体育科教師が持つ知識や子供から信頼される条件等がわかり,教師が信頼を獲得しながら教育実践を行う,そのバックグラウンドにある教師の信念もわかってきた。今後,この成果を踏まえて研究を進めることは,保健体育科の教師の資質・能力に大きく寄与すると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2015年度は,熟練教師の実践的知識と信念について,インタビュー調査を実施するとともに,オン・ライン-オフ・ライン・モニタリングによって,構造化することを目指した。 結果的に,2015年度は,構造化するまでには至っていない。その理由は,サンプルの少なさにある。3名の調査を実施したものの,それぞれに特徴があり,さらに幅広く調査することによって構造化されると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
27年度で明らかにする熟練教師の持つ実践的知識の妥当性及び構造化と,実践的知識を基礎として営まれる教師の実践的な状況への関与と問題の発見,表象,解決の思考の様式,いわゆる「実践的思考様式」を明らかにする。実践的思考様式を明らかにするため,佐藤ら(1990)が適用したオン・ライン―オフ・ライン・モニタリングの方法に準拠して行う。また,教師の実践的知識が子供の思考・判断力へ及ぼす影響について,子供の記述内容の分析,アンケート調査から明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めるにあたって書籍購入やデータ分析の人件費必要となり,振込手数料が必要となったため,1,500円程度の残金が出た。
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次年度使用額の使用計画 |
今後も分析等で人件費が発生すると予想できるため,振込手数料に充当する。
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