研究課題/領域番号 |
15K01528
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研究機関 | 文教大学 |
研究代表者 |
高井 和夫 文教大学, 教育学部, 准教授 (00383216)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 調整力 / 子ども / 実行機能 / 心理社会的発達 |
研究実績の概要 |
<研究目的>主たる研究課題「幼少年期の実行機能発達を支える『こころ』と体の調整力」のうち,就学前からの幼少年期の子どもを対象に,「こころ」 と体の調整力の習得が実行機能の発達に及ぼす影響を明らかにするため,要因間の関連性についての量的・横断的な検討により,概念モデルの確認・検証を企図した.また,子どもの身体活動に関わる実行機能発達に関する研究動向について概観した(研究 2, 平成28年度). <調査内容>調査への参加に同意した幼児の保護者に対して,研究倫理に留意し,調整力要因,実行機能要因,及び心理社会的要因に関する調査用紙に回答を求めた. <主な結果> ・上述の主要因・鍵概念について,多変量解析をおこなったところ,3歳児,4歳児,及び5歳児の各年齢群において,調整力から実行機能へのパス,そして実行機能から心理社会的要因へのパスが有意な貢献を示した.発達ごとのパスの貢献度の差異について検討したところ,調整力あるいは実行機能による心理社会的要因への直接効果は発達ともに減少傾向だったが,調整力-実行機能-心理社会的要因の間接効果については年齢間でほぼ同様の関係性を示した.この結果から,運動課題に対してこころと体が一体的に関わること,同時に人的・物的環境と相互的に関わることで,幼児の実行機能が活性化され,この体験の積み重ねがコンピテンス(有能さ)として積み上げられ,心理社会的発達につながる,と示唆された. ・また,身体活動と実行機能の研究動向については,まず身体活動と基本的運動技能の関連性に関して,ボール操作技能などの対象操作と歩行などの移動能力に一貫した貢献が認められ,神経系と一般型に固有の特徴を現す発達期での調整力への影響も示唆された.次に,身体活動,体力,体育授業による認知機能への影響に対しては正の恩恵が認められたが,低下を報告する研究が少ないゆえ解釈には慎重を期する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主たる目的を「幼少年期の実行機能発達を支える『こころ』と体の調整力」と設定し,3つの下位目的の解決を通じて,子ども期の調整力発達と心理社会的発達の関係を説明する実行機能の役割につて実証的な検討を試みている.平成27年度(研究1)で,上述の研究主題にかかわる鍵概念間の関連性について概念モデルを構築するため,研究動向の把握を行った. 平成28年度(研究2)は,それを踏まえ,幼児を対象に調整力,実行機能,及び心理社会的発達の関係性を調査研究により検討した. 研究最終年度の平成29年度(研究3)では,これまでの成果に基づき,子どもの調整力と心理社会的発達を説明する実行機能の役割について,運動プログラム開発の可能性と全体像の解明を進める予定である.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の主たる目的を「幼少年期の実行機能発達を支える『こころ』と体の調整力」と設定し,3つの下位目的の解決を通じて,子ども期の調整力発達と心理社会的発達の関係を説明する実行機能の役割につて実証的な検討を試みている. 上述のとおり,研究最終年度の平成29年度(研究3)では,これまでの成果に基づき,子どもの調整力と心理社会的発達を説明する実行機能の役割について,運動プログラム開発の可能性と全体像の解明を進める予定である.この実現のため,まず研究動向の把握によって,子どもの調整力-実行機能-心理社会的発達につながる実践方策を理解するとともに,その実効的な運動プログラム開発に発展させていきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費における研究機材の納入が年度をまたぎ,執行結果に反映されなかった.他の支出項目については予定通り執行している.
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画最終年度,平成29年度(研究3)の実施のため,直接経費に1,100千円を申請している.その内訳としては,物品費に420千円,旅費に310千円,人件費・謝金に300千円,その他に70千円の使用を計画している.支出計画に沿って遺漏の無いように執行していきたい.
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