研究課題/領域番号 |
15K01530
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
荻原 朋子 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (50365566)
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研究期間 (年度) |
2016-01-27 – 2019-03-31
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キーワード | 素朴概念 / 体育授業 / 小学校 / 仲間学習 / オーバーハンドパス / ネット型単元 |
研究実績の概要 |
本研究では,小学生の素朴概念を修正する学習指導方略であるとされる仲間学習を用いて素朴概念の修正可能性について実証的に明らかにすることを目的とした. 上記目的に照らし,平成29年度は①平成28年度に実施した小学校体育授業におけるオーバーハンドパスの素朴概念に関する実態調査の成果発表,②小学校高学年児童における仲間学習を適用した素朴概念を修正するための学習指導方略に関する介入検証授業を行った. ①平成29年6月24~25日に仁川大学(韓国)で行われた第6回東アジアスポーツ教育学会(International Conference for the 6th East Asian Alliance of Sport Pedagogy)において,「Peer Teaching Correcting Naive Conception and Performance in PE classes.」の題目で発表を行った.また,平成29年9月8~10日に開催された第68回日本体育学会において「オーバーハンドパス技能の素朴概念を持つ児童の変容可能性に関する検討」の題目で発表を行った. ②平成29年10月から12月にかけて,素朴概念を修正するための仲間学習を適用した10時間のネット型単元の授業を実施し,児童のオーバーハンドパスに関する素朴概念とパフォーマンスがどのように変化するのかを検証した.調査対象者は、千葉県I小学校6年生(32名)であった.申請者が開発した小学生用のオーバーハンドパスに関する素朴概念調査票を用いて単元前後に調査を実施した.また、オーバーハンドパスの素朴概念を持つ児童の授業中における言語活動を検討するため,抽出児童にマイクを付けて記録した.オーバーハンドパスのパフォーマンス評価については,技能の定着度の観点から行った.結果については,現在分析中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は,小学校高学年児童における仲間学習を適用した素朴概念の修正を試み,仲間学習を適用した単元における児童の教え合いの内容を明らかにするため,児童にマイクを付け,どのような言語活動が行われているかを検証しようとした.その結果,音声が聞き取りにくい等の問題から,検証することが困難な状況がみられた.一方で,仲間学習における児童の学習カードの記述と実際のパフォーマンス評価についての一致率を検討したところ,素朴概念を持っている児童やパフォーマンスが低い児童においても,そうでないペアの児童も60%~70%程度であることが示唆された.つまり,仲間学習を実施することで,教師から支持されたポイントについて理解し,仲間の動きを評価することができていたことが明らかになった. 平成28年度の検証授業では少人数クラスでの実践だったが,平成29年度の検証授業では32人クラスでの実践を行い,対象人数を増やすことができた.また,言語活動を観察するためのマイクを,単元前の調査において「手の形」に関する素朴概念を持つ児童4人に付け実践を行った.結果については,現在分析中である.検証授業の分析を進める中で,児童の素朴概念やパフォーマンスを検証し,素朴概念を修正するための学習指導方略の課題を明らかにすることが可能になると考える.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に映像分析ソフト及びPCを購入したため,今年度は映像の分析及び言語活動の分析を進める.素朴概念を修正するためには,様々な要因が関わっていると考えられる.それらを学習指導方略(仲間学習)の適用可能性と限界を探ることで,改めて検証していく必要がある.また,映像分析,言語活動の分析と平行して,素朴概念の修正を目的とした仲間学習に関しての検証授業の積み重ねていくことが必要である.可能であれば,対照群を設定し比較検討する.その際には,倫理的配慮を必ず施し,児童にとって不利な状況にならないよう細心の配慮を行うこととする.素朴概念の修正を促すための授業方法論などについて明らかにしていくことが今年度の課題となる. また,平成29年度の検証授業の成果について,平成30年度に開催される東アジアスポーツ教育学会やその他の学会等で発表し,日本体育学会,日本体育科教育学会,日本スポーツ教育学会等にも参加し,最新の研究についての情報収集も行うこととする.
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