研究課題/領域番号 |
15K01537
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研究機関 | 常葉大学 |
研究代表者 |
大矢 隆二 常葉大学, 教育学部, 准教授 (50554276)
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研究分担者 |
伊藤 宏 常葉大学, 教育学部, 教授 (20022296)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 中学生 / 体育学習 / 投動作学習 / 自由記述文 / テキストマイニング / 意識の変容 |
研究実績の概要 |
平成27年度に実施した研究は、調査協力校における投力向上に関する授業実践をもとに、「中学生の投能力向上を意図した体つくり運動の実践的研究」を試み、その成果から研究論文を執筆した。 調査は、静岡県静岡市N中学校第1学年のうち、体育授業における10分間×9回(投に関する基本の動き)の投動作学習を受けた生徒に対し、学習前後のハンドボール投げの測定結果を受けての感想を求めた。これらのうち、属性および自由記述文に書き漏らしのなかった121名(男子61名、女子60名)を分析対象者とした。自由記述文について、「今回の記録会であなたが意識したことはどのようなことですか」についての回答を分析データとし、Text Minig Studio5.1.1(NTTデータ数理システム社)を用いて分析した。TMStudioを用いた分析を以下に記す。 1.中学生の自由記述文にはどのような単語が多く存在するか、データの傾向はどのようになっているのかを抑えるために、単語頻度解析を行った。 2. 属性毎に特徴的な単語を抽出するために、特徴語抽出を行った。 3. 同一文章中もしくは同一行中に出現する単語の確率および頻度の関連性をみるために、ことばネットワークによる単語間・単語と属性の連関を抽出した。 その結果、単語頻度解析では、頻度数の多い単語は、「ステップ」「体重移動」「意識」の順であった。特徴表現抽出は、単語間の係り受けの指標の高い順に、「意識―がんばる」「目線―上げる」「ステップ―意識」があげられた。ことばネットワークでは、「ステップ」「体重移動」「肩」「肘」の4つの共起関係が見られた。以上のことから、学習の中心課題であったスムーズなステップで体重移動を行い、肘を肩より高く上げ、手首のスナップを利かせた投動作を意識して投げていたことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、静岡県静岡市N中学校の体育科教員の協力のもと、投動作学習前後のハンドボール投げの測定結果を受けての感想を求めることができた。第1学年に向けて、「投力を身に付けるためのスタート学習における基本運動を実践してのアンケート調査」と題した質問紙を授業最終回に配布し、対象者に回答させた。その分析結果をもとに成果をまとめ学内紀要に執筆した。並行して、体育学習における投動作を伴う指導がどのように行われているかについて調査を実施し、中学校体育授業における「投げる運動」の指導の現状と課題を分析することができた。第1学年では、基礎的な投動作が身に付いていない生徒が多いことが明らかになり、ベースボール型の授業の質を高めていくには、体育授業において身体の動きを学習に組み込む必要性が示唆された。 平成28年度は、研究協力校において学習前後の遠投距離変化の背景にある動作(投射角度、初速度、後傾角度、投射位置など)を定量的に分析し、投動作学習の成果を検証する。さらに、投能力が改善されることによって得られる生徒の有能感、それに対する教育的価値は意義深いと考えられるが、多忙な教育現場の実態から投動作指導の重要性を認識しながらも、実際には行っていない状況もみられる。これらの学習指導における有益な情報を得るために教員へのインタビュー調査を試み、教師の指導実態について分析していく計画である。これらの結果を踏まえて、教材内容や授業について再検討を行い、教材の改修を行う。
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今後の研究の推進方策 |
これまで小学校体育科教育における投能力向上の教材開発を行ってきた。体育学習等で活用しやすい投動作の基礎的な動きを学習プログラムとして開発し、平成25・26年度に無償提供(DVD教材:タブレット端末対応)してきた。これまでの研究成果を踏まえながら、中学生に求められる投能力改善のための学習に焦点を当てた教材開発を目指していく。そのため、静岡県の中学生に対し投能力改善のための学習プログラムを実践し、その成果を教育現場に発信していく。今後の研究の推進方策として、次の手順で進めて行く計画である。 1.中学生男女の投動作の分析をし、その実態を把握する、2.中学校体育授業における「投げる運動」の指導の現状と課題の分析、3.学習プログラムの内容の構築、4.投能力改善のための学習プログラムの効果の検証 本研究は、長期的に低下傾向を示している中学生の投能力の課題に直接的に応えるものでありその重要性は非常に高く、かつ広く学校現場および地域社会に研究成果を還元できるという点において大きく期待されるものである。学習プログラム開発のために、フィールドワークを加えて研究協力校や教育委員会との連携を工夫している。また、学習プログラムを完成させる際に、共同研究授業を実施し検討・改善を加え、より効果を高めている点に特色がある。 研究を遂行して行く上での課題は、中学生に対する投能力改善のための学習プログラムを作成する予定であるが、現職教員との協議の中で教材内容を変更する可能性がある。適宜、研究分担者や協力者と教材内容について検討し修正を図る。また、当初の計画通りに進んでいない場合には、その原因を探り、全体計画の中で必ず遂行するべき内容を絞り込むことを含め、計画を再検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究実施がやや遅れたことにより、研究者間の打ち合わせや学会参加の旅費が少なくなったこと、さらに物品費の購入が遅れたことが理由としてあげられる。
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次年度使用額の使用計画 |
生じた次年度使用額については、主な追加的図書の購入、消耗品の補充、さらに打ち合わせ・学会参加旅費などに使用する計画である。
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