スポーツなどで合目的な運動を産出する際、チームメイトなどのプレーに対して同期するようなタイミングが一つの目安となる。また、合目的な運動パターンを産出するためにも、各筋群の相互の出力のタイミングが重要であると推察される。この根底には、能動的な同期行動における力量発揮として、オンとオフのタイミング同期があるだろう。しかしながら、スポーツでの時間間隔の産出に関する知見として、音声教示や視覚教示など、呈示される教示としての時間間隔に対して、オン・タイミングとオフ・タイミング一致の運動制御機構について解明できていないことが挙げられる。そのため本研究では、これらのタイミング行動2種に加え、一定の時間間隔、誤差を有した時間間隔(1/f型揺らぎ、白色ノイズ)への同期3種と、運動頻度(周波数)7種、との関係を検討することを主なる目的とした。さらに、これらの測定条件を用いて、小筋群運動として指タッピング(2016年度実施)、大筋群運動として肘屈伸運動によるタッピング(2017年度実施)を課題として設定した。そして、これらを解明する理論的背景に非線形力学系理論を援用し、同期タイミングにおける運動制御の現象を解明することを研究の最終到達点とした。これはスポーツにおいて、力量発揮のタイミングとして、力を込めるタイミング、あるいは力を抜くタイミングの制御機構を検証することに繋がる。これを実践するために、まず正確な時間間隔を呈示する実験装置が必要となるため、1 年目の前半にオン・タイミングとオフ・タイミングで共有できる閉開器式スイッチの作成を行い、後半に刺激呈示プログラムを組んだ。2年目の2016年度には、利き手示指によるタッピング課題の実験測定を測定参加者計13名に対して実施した。
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