研究課題/領域番号 |
15K01541
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
河鰭 一彦 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (00258104)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 柔道 / 頭頸部損傷 / ハイリスク群 / 頭頸部筋力 / 身体教育教育 |
研究実績の概要 |
「授業担当者が頭部外傷の柔道事故リスクを持つ生徒を簡便に把握する方法の開発」の平成27年度における研究実績は以下である。本研究は柔道を教授する学校現場や道場などの現場において頭頸部筋力の不足から惹起される「重度頭部損傷受傷ハイリスク群」の簡便な抽出法を開発するために計画された。研究計画は第1次実験から第3実験であり、平成27年度は第1次実験と第2次実験をおこなった。第1次実験は①頭部・体幹を中心とした人体モデルを作成する。これまでの資料とコンピュータシミュレーションの結果より精巧な人体モデルを作成する。ここで注目する筋は主に「胸鎖乳突筋」「僧帽筋」「広背筋」である。②頭部重量、頭部組成、受け身中頭部動揺の資料から受け身時必要とされる頭頸部固定筋力を算出する。第1次実験は他大学の研究機関に協力をいただいた。第2次実験は①簡易筋力測定装置米国HOGGAN社製microFET2を用いて簡易頭頸部筋力を測定する。②測定姿勢は椅子坐位を基本とし頭部を屈曲、伸展させる頸部の筋力を測定する。③、②と同様の姿勢で頭部側屈回旋方向の頸部筋力を測定する。④ 更に柔道場面をシミュレーションして仰臥位姿勢での測定を行う(屈曲伸展、側屈回旋方向)。⑤、①~④の手順で得た簡易頭頸部筋力測定の妥当性があるか否かを検討するために頭頸部筋力基準値を測定する。この基準値は実験室精密実験であることが要求される。そこで、竹井機器工業社製多用途筋力測定台用測定システムを用いる。この機器は被験者の身体が効率よく測定装置に固定することができ、結果測定の精度を上げるうえで重要なことである。簡易頭頸部筋力測定値と実験室精密実験で得られた基準値との相互関係は統計解析を用いて詳細に検討を加え、簡易筋力測定装置米国HOGGAN社製microFET2を用いて得られた簡易頭頸部筋力測定の妥当性を導出する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要において述べた、第1次実験の基礎実験をおこなった。このときの実験プロトコールは柔道畳みでプラットホームを構成しその内部にフォースプレートを設置した。研究代表者が所属する関西学院大学人間福祉学部には50cm×70cmのフォースプレートが配置されている。次のプロトコールは「取り」があらかじめ決められた技を施す。投げられた「受け」は畳がひかれたフォースプレート上で受け身をするというものであった。実際の柔道場面で投げられた「受け」の人体が受ける衝撃負荷は畳に緩衝されていることはあきらかなのでより現場に近い状況を設定するためである。被験者に特に注意を喚起した点はフォースプレート上に投げてくださいということであった。フォースプレートの上に載せられた畳にはフォースプレート中央部と重なる位置にテープで×印を貼付した。「取り」には、「受け」重心があると予測できる「受け」の臍部周辺を「×印に着地させるように投げ技を施すこと」と指示・徹底した。これらのプロトコールから得られたフォースプレートの資料を詳細に分析すると「受け」が投げ技を施され受け身をする際の床反力記録は2相のピーク値を示す結果となった。同時に撮影されたビデオ分析とあわせて「手・腕が受け身の際畳を叩く動作と重心の着地に時間差があり2相となった」等のいくつかの解釈が想起されたが確実なエビデンスが得られたわけではない。2相のピーク値は真の値なのか否かは現況では確かめようがない。第1次実験はフォースプレートから得られた資料の分析が重要になるのでこの点についてさらなる検証が必要であり新たなプロトコールが必要になると考えている。このような状況から「区分(3)やや遅れている」と報告した。第2次実験に関しては30人ほどの被験者を対象にして実験が完了しており、平成28年度の日本武道学会大会での発表を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は第1次実験の追加実験として関西学院大学人間福祉学部に設置されているフォースプレートよりも面積が大きいフォースプレートを用いておこなう必要がある。一枚の畳と同じ面積を持つ1台のフォースプレートか複数フォースプレートが一枚のフォースプレートとして機能する実験機器を有する他大学をはじめとする研究機関に協力を要請する必要があるため、現在交渉中である。さらに平成28年度には当初の計画にあった、第3次実験(多人数多年齢層頭頸部筋力測定)をおこなう事を予定している。簡易筋力測定装置を用いて全国の小学校、中学校、高等学校の柔道修行者(授業参加生徒も含む)を対象とし頭頸部筋力を測定する。測定方法は〔第1次実験〕において得られた知見をもとに決定する。測定対象者は地域バイアスを避けるため、北海道、東北、北信越、関東、東海、近畿、中国、四国、九州、沖縄の全10地方を対象とする。生徒の就学人口をもとに各地方の被験者数を算出したのち、測定に参加していただける被験者を募集する。被験者募集に関しては都道府県の柔道連盟や研究代表者の共同研究者や友好柔道団体を通しておこなう。総計で500名以上被験者を募る必要がある。得られた資料の統計解析を行い簡易頭頸部筋力がどのような分布を示すかに検討を加え評価基準値を作成する。第1次実験で得られた資料と評価基準値を比較して危険臨海基準値を各年齢層で算出する。実験・測定や分析が遅滞した場合はた研究機関の研究協力者に支援を求める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度実験室実験が主となったため実験・測定をおこなうための旅費が当初予定より低くおさえられた。同時に実験の手順が当初予想していたより被験者の拘束時間が少なくすんだため人件費が予算を下回った。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は実験・測定のために旅費が大幅に増加することが予想される。さらに情報収集のための旅費や関連学会の学会出張も多く予定していることから未使用額は旅費に充てる。人件費・謝金を被験者の数は500名を予定しているので大幅に増加する予定である。
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