「授業担当者が頭部外傷の柔道事故リスクを持つ生徒を簡便に把握する方法の開発」は柔道を教授する現場において頭頸部筋力不足から起こる「頭頸部損傷受傷 ハイリスク群」の簡便な抽出法を開発するために計画された。実験は第1次実験から第4次実験で構成されている。平成30年度には柔道初習者である中学校男子を想定し同レベルの体力と考えられる『「学生保健体育教員免許状取得コース受講中女子学生」のうち初めて「柔道授業」をした6名』対象として「後ろ受け身中の頭頚部筋力発揮」を計測する実験を行った。実験構成は遠隔操作ができる筋電センサーを被験者の両側胸鎖乳突筋に装着し、後ろ受け身を行わせ「後ろ受け身中の胸鎖乳突筋筋放電量」を記録した。その後、筋電センサーを装着したまま、多用途筋力計に被験者を椅坐位させ体幹を固定した。続いてデジタル力量計とつなげられたアタッチメントを前額部に装着し「頭部屈曲」おこなわせ「頭頚部屈曲」と筋力発揮時の筋放電量を測定した。筋力発揮と筋放電量の関係については相関の強さにいくつかの疑義があるが、本研究においては「筋力発揮と筋放電量には統計上優位な関係がある」という立場をとった。屈曲動作は3秒間最大随意筋力を発揮し、その後3秒ごとに任意で最大下筋力発揮を9回行わせた。筋力発揮は計10回であった。筋放電量は各筋力発揮中のピークから前後0.5秒(1000ms)の積分値とした。解析の結果、筋力と筋放電量との有意な関係を得ることができた。ここで得られた「回帰式」に「後ろ受け身中筋放電量」を代入し被験者が発揮する「後ろ受け身中の頭頚部筋力発揮」を推定した。結果おおよそ「頭頚部屈曲筋力発揮は約10㎏ある」と導出できた。第2に第3実験の複合実験である上記実験の知見を平成30年度の日本体育学会、日本武道学会において研究代表者が登壇発表した。さらに第3実験、第4実験を完遂することができた。
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