「健やかな体を育む教育のあり方に関する専門部会」(以下「健やか部会」)では、身体能力を育む事が重要な課題となりながらも、体育授業を旧来の直接的な「体力つくり」の場とするのではなく、運動の技能や知識を学習することを授業の基本に据えつつ、体力問題にも応えようとしてきた。そこで、「健やか部会」では、「身体能力のエッセンス」(旧来の体力要素)を直接評価するのではなく、これと体育授業の技能の学習成果の評価とを関係づける「代位的目標達成指標」を設定できないかという議論が行われた。 しかし、この議論は完遂されず、結局「審議のまとめ」では「身体能力は体力と技能とからなる」とされ、「身体能力の要素」を育む事が重要だとされた。ただしそこには、体育授業における技能学習の成果が意識されており、身体能力の育成と授業における技能学習の成果とをどう関係づけるかという問題は、依然として重要な課題として残されている。教育現場の教育実践や研究の中でも、技能の学習を優先する立場、からだの認識や使い方を重視する立場、そしてコオーディネーショントレーニングの立場等、さまざまな主張がなされてきている。 本研究の主目的は「身体の能力」の評価方法について、「代位的目標達成指標」と「コオーディネーション能力」に着目して明らかにすることであった。 身体の能力の評価方法としては、①閉眼片足立ち、②30m走・30mスラローム走、③ねらいボール的あて、④ねらい幅飛び降りの4つの測定が、新体力テストの測定項目との間に相関関係がみられなかった。ことから、これら4つの評価方法は、独立した測定指標として有効であると考えられる。
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