本研究では、日本の身体運動文化の変革点の一つである近世初期に焦点をあて、近世武芸がどのような過程で現代武道にも通底する教育的性質を帯びていったのかについて明らかにすることを目的とした. 近世初期の理想的な武士像として、戦闘者的武士観と士的武士観が並列して存在していた.戦闘者の特性と為政者としての特性が提示されるとともに,武士階級において両者の理論的両立が求められていた.そして,武士教育の内容としては,これらを二面的特性として持つ武士の〈再〉生産過程として,それぞれの性質を教育する内容が示されていた.こうした理念は現実の兵法教授の中で受肉されたと考えられる.
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