本年度は、これまで取り組んできた研究の成果を、1.現状の部活動において発生している問題と関連づけて公表することと、2.中学生や高校生に向けて公表・還元することに努めた。 1に関しては、市立尼崎高校において体罰事件が発生したことを受けて、本研究の成果に基づく論稿を執筆した。『子どもと発育発達』(第17巻2号)では、「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」の意義と課題―これまでの発育発達に関わる議論をふまえて―」を題目とした論稿を執筆し、発育発達論から国のガイドラインの課題を示した。また、『季刊 人間と教育』(旬法社)では、「スポーツ、クラブ・部活動、「子どもの権利」ー市立尼崎高校における暴力事件が意味すること」を執筆し、子どもの権利の観点から市立尼崎高校の事件について検討した。さらに、2019年12月8日に開催された日本部活動学会第2回研究集会では「運動部活動における暴力・暴言の構造」というテーマで報告を行い、市立桜宮高校と市立尼崎高校の体罰事件を比較し、今後の課題を示した。 2に関しては、これまで取り組んできた実践研究の成果を、中学生や高校生に還元する論稿「運動部活動とあなた」を所収した、佐藤善人『スポーツと君たち―10代のためのスポーツ教養』(大修館書店)が刊行された。また、2020年5月に『僕たちの部活動改革ー生徒自治10のステップ』(かもがわ出版)を刊行する予定である。それに伴って、関西大学・神谷拓研究室のホームページを開設し、教育現場の部活動実践を充実させるワークシートを公開した。さらに、同サイトと、先ほどの文献(かもがわ出版)と連動させた解説動画も公開する予定である。
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