研究課題/領域番号 |
15K01550
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
鍋倉 賢治 筑波大学, 体育系, 教授 (60237584)
|
研究分担者 |
徳山 薫平 筑波大学, 体育系, 教授 (00207565)
榎本 靖士 筑波大学, 体育系, 准教授 (90379058)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 中長距離走 / 走の経済性 / 脂質代謝 / 乳酸性代謝閾値 / 無酸素性エネルギー消費量 / 血中乳酸濃度 / 高強度走 / 酸素借 |
研究実績の概要 |
長距離競走の成否には、大きなエネルギー供給能力(最大酸素摂取量など)に加え、エネルギーを節約(省エネルギー)して走る能力が重要となる。例えば、莫大なエネルギーを要すマラソンでは、体内に蓄えた糖質には限りがあるため、糖を節約しつつ走りきることが重要であり、マラソンより短い種目でも、終盤のスパートには糖(筋グリコーゲン)の利用が欠かせない。エネルギー(糖)の節約に関わる能力の一つとして脂質代謝能力がある。一方、省エネに関わる能力には走の経済性(RE)があり、これがトップランナーのパフォーマンスの優劣に直結するとした報告は多い。本研究はこの2要因に焦点を当て、長距離走パフォーマンスとの関係を明らかにし、トレーニング課題、効果的なトレーニング法について提案することを目的とした実践研究である。 平成27年度は、無酸素性エネルギー代謝の貢献が大きくなる高速度におけるランニング中のREを評価するために、高強度運動中のエネルギー消費量の推定法の妥当性を検証した。現在、高強度運動時の無酸素性エネルギー代謝の評価法は、Medbo(1988)による酸素借(AOD)法がゴールデンスタンダードとされている。しかし、この方法では事前測定を要すなど簡便とはいいがたい。本研究では、トレーニング現場での有効活用を最終目標においているため、簡便に評価できる方法を採用したいと考えている。そこで、競技現場でもよく用いられる血中乳酸濃度を用いた無酸素性エネルギー消費量の推定法の妥当性を検証した。研究分担者である、榎本靖士・筑波大准教授、丹治史弥氏(筑波大大学院)と共同し、血中乳酸濃度をもとに無酸素性エネルギー代謝量を推定し、酸素摂取量から得られる有酸素性エネルギー代謝量に加えることで妥当に評価できることを明らかにした。この手法を用い、高強度走行中のREを評価し、ランニングフォームとの関係を検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度の課題であった血中乳酸濃度を用いた、高強度運動中の酸素需要量の推定法について検証し、論文をまとめ投稿中である。また、その方法を用いて高強度走行中の走の経済性を測定し、平成29年度以降に実施する予定であったバイオメカニクス的評価との関係性において一定の見解を得て、これについても研究論文(ランニング学研究)としてまとめた。さらに、これも平成29年度以降の課題である長時間の運動中の脂質酸化量について予備実験を行い、それについて学会発表(体力医学会)を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、もう一方の研究課題である脂質代謝の評価法についての研究に着手する予定である。 個人の脂質代謝能力を評価するために、運動時の脂質酸化量が評価されてきた。Cheneviereら(2009)は、運動強度に対する脂質酸化量を測定し、数理モデル(サインカーブ)によって客観的に評価できる方法を提案している。この方法では、運動の開始強度ならびに漸増させる強度の上げ幅が一定のため、個人の持久力の高低によって運動時間も変化してしまう(小林:2014)。運動時間の延長は脂質酸化を亢進させるため、被験者間の能力を比較したり、個人内であっても持久力の異なる状況で比較したりする場合、同一の運動時間になるようなプロトコールが不可欠である。そこで、開始運動高度などを変更させた複数の実験プロトコールを用い、運動時間の差異が脂質酸化量にどの程度影響するのかを明らかにし、脂質酸化量を評価するための妥当なプロトコールの提案を目的とする。 平成29年度以降は、この方法によって評価した個人の脂質代謝能力、平成27年度に明らかにした方法による高速度における走の経済性を評価し、マラソンを含めた中長距離走パフォーマンスとの関係、トレーニングとの関連について検討し、エネルギーを節約する能力(脂質代謝能力、走の経済性)の重要性について明らかにしていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験用消耗品が予定より安価に済んだため。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度の脂質代謝の評価法に関する研究のために必要な消耗品の購入費用の一部として使用予定。
|