「スポーツ活動の運動様式・強度・実施時間帯が睡眠時の血圧及び睡眠に及ぼす影響」を明らかにするために,平成27年度は運動様式を自転車運動として,睡眠を評価するパラメーターと睡眠時の血圧を測定し,運動実施時間帯がその日の夜間の睡眠や血圧に及ぼす影響を検討した。平成28年度は,運動様式をテニス(認知判断を伴う球技)とし平成27年度と同様の測定項目について検討した(被験者に軽度の本態性高血圧患者を含む)。これらの実験から午後の運動の実施は,睡眠時の血圧の低下に影響を及ぼすことや,運動の実施は時間帯にかかわらず睡眠の量や質を改善させることを明らかにした。その上で,平成29年度は以下の2つの実験を行った。 (実験1):フットサルを夜間 (18:00~21:00) に実施した日,実施しなかった日(コントロール日)の夜に,睡眠時の血圧,睡眠パラメーター及び自律神経系緊張度の評価を行った。被検者は,大学生フットサル部員男女13名であった。運動実施日は,コントロール日より入眠潜時が短くなる傾向があった。平均血圧の睡眠中全体の平均値および最低値は,昼間の値に比べて,コントロール日,運動実施日ともに有意に低下した。加えて,昼間の平均血圧に対して,就寝前の平均血圧は,運動実施日のみ有意に低下した。 (実験2)被検者は,レジスタンス運動を行う習慣のある(経験3‐14年)健康な男性7名(23‐57歳)であった。各被検者は,レジスタンス運動(10~20RM,5~10回×3セット,レッグプレス,ベンチプレス,デッドリフト)実施日と実施しなかった日の夜に,実験1と同様の測定を行った。総睡眠時間に対する深いnon-REM睡眠の時間の割合は,コントロール日と比較して運動実施日において長くなる傾向があった。平均血圧の睡眠時全体の平均値は,運動実施日とコントロール日の間に有意な差は認められなかった。
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