ある具現化された運動形態(例:運動、速度、パワーやタイミング)に対し、それを想起させるオノマトペ(OP)を用いることで、その運動効率が変わることを我々は経験的に知っている。しかしその効果の検証は十分ではない。最終年度では①OPにより運動が変化する生理学的理由の検証、並びに②精神障害者が通所するデイケアでスポーツ指導時のOPの活用について調査を行った。①では、運動の力強さと速さを対象に、GuとSuのOPを用い、その発声に伴う腹圧の変化や咬筋の筋電図を指標にOPと運動効率の因果関係を検討した。対象者は立位にて、検者からの用意の合図後3~5秒の間隔で前方1mにあるスピーカからの音刺激と同時に、事前に指示されたOPを発声しながら右手に持った握力計を出来るだけ早く、力強く握ることを教示された。記録は呼吸量、腹部の収縮量および咬筋の筋電図から得た。GuではSuに比べ、握力計の値は高値を示したが反応時間は遅延していた。更に腹部の収縮量の変化は大きかったが呼気量は少なかった。咬筋の筋電図も高値を示していた。これより、力強さを反映するOPの Guは歯の噛み締めと同時に腹圧を高めることで握力を増加させたが、速さのOPのSuは呼気量を増すことで運動の速さに変化を与えた。OPは腹部の収縮と呼気量の変化により腹圧を調整させることで運動効率を変えることが示唆された。②では、デイケアのスポーツプログラム参加者(SDC)に運動に関するOPのアンケート調査を実施し、指導者(健常者)との間に齟齬がないかを検討した。動作や強さでは、健常群とほぼ回答を得たが、速さや動作の質では想起が異なる傾向を示した。これより、OPの使用は運動を想起しやすく有効である一方、運動の内容によりその有用性のさらなる検証が必要であることが示された。これらの成果は3学会において発表を行った。
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