研究課題/領域番号 |
15K01566
|
研究機関 | 國學院大學 |
研究代表者 |
神事 努 國學院大學, 人間開発学部, 助教 (20387616)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ボールスピン / セイバーメトリクス / ピッチング / 野球 |
研究実績の概要 |
セイバーメトリクス(野球選手評価数理理論)と呼ばれる統計量によって、野球の投手の能力を評価することが一般的になりつつある。これら統計量は、投手の能力を総合的に評価できる一方で、投球されたボールやフォームに関する力学量とどのように関連しているのか明らかになっていない。そこで、セイバーメトリクスで扱う統計量が、投球されたボールの速度や回転、フォームなどのバイオメカニクス的変量とどのような関係があるのかを検証することを本研究の目的とした。 研究の申請時は、投手を評価するバイオメカニクス的変量の計測を、モーションキャプチャーシステムを用いて行うことを想定していた。選手の負担や、サンプル数の課題を解消するために、試合中のボールの初速度、回転速度、リリース位置、投球軌跡を自動で計測できるシステム(TrackMan Baseball、以下Trackman)によるデータ採取を平成27年度は行ってきた。 平成28年度は、Trackmanによるデータの採取を継続して行い、98673球329名のデータを収集した。これらデータ採取と平行して、Trackmanで採取できるデータの信頼性について確認を進めてきた。採取されるデータは球場によって系統的な誤差を含んでいることが確認された。これは、球場の形状によるものなのか、キャリブレーションを含めたTrackman側の問題なのかを検証中である。 セイバーメトリクスで用いられる指標はサンプルサイズによって信頼性が変わってくる。ゴロ割合やフライ割合に関しては、最低で70BIP(BIP=打数-三振-四死球-本塁打)のサンプルが必要であるが、2016年は183名が相当していた。研究を行ってきた2年間で蓄積されたセイバーメトリクスのサンプルサイズと信頼性の高さを考慮し、Trackmanデータで予測できるセイバーメトリクスの指標を現在選定中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請当初から研究手法に大きな変更があったが、試合中のデータを計測できるという点で、より信頼性の高いデータの採取が可能になった。そして、平成28年度は98673球329名のデータを収集することができた。 空振りや、ゴロ、フライしたイベントについて焦点をあて、どのような球速、回転速度、回転軸の角度、リリース位置で打者を打ち取っているのかを明らかにするために現在解析中である。
|
今後の研究の推進方策 |
セイバーメトリクスの指標は、データのサンプルサイズによって、信頼性が変わってくる。これまで481名分のバイオメカニクス変量を計測してきたが、セイバーメトリクスの指標と関連づけられる投手はこの半数程度である。今後は、平成28年度と同様にTrackmanによってデータを計測し、セイバーメトリクスの指標と関連づけられる投手の数を増やしていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
申請当初は、高速度ビデオカメラ(Phantom Miro ex)を購入し、モーションキャプチャーシステムを用いることで投手を評価するバイオメカニクス的変量の計測を行うことを想定していた。しかし、選手の負担や、サンプル数の課題を解消するために、試合中のボールの初速度、回転速度、リリース位置、投球軌跡を自動で計測できるシステム(TrackMan Baseball、以下Trackman)でのデータ採取を行ってきた。よって、当初見込んだ額が、次年度使用額として生じている。
|
次年度使用額の使用計画 |
Trackmanを用いて計測しているものの、すべての投手を計測できるわけではない。そこで、ボールの回転速度と回転軸の角度を計測できる携帯型のシステム(Rapsodo Baseball)を用いて、Trackmanで計測できなかった選手のデータを採取し、より多くの選手のデータを採取することを予定している。このために次年度ではRapsodo Baseballの購入を予定している。
|