研究課題/領域番号 |
15K01570
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
深見 英一郎 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 准教授 (10351868)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 運動部活動 / 調査票 / 生徒の主体性 / 指導者の主導性 / チームの目標 / 個人の目標 / 生徒の満足度 |
研究実績の概要 |
運動部活動は、学習指導要領にその意義と留意点が記載され、学校教育活動の一環として多くの中・高校生並びに指導者を巻き込んで大規模に展開している。運動部活動では、これまでオリンピック選手やプロスポーツ選手をはじめとした多くのトップアスリートを養成・輩出し、日本のスポーツ界を支えてきた。 文部科学省は、運動部活動の指導の在り方について、生徒との意見交換を十分に行い、彼らの意見を十分に反映させること、また生徒の主体的な取り組みを強調している。なぜ、運動部活動において生徒の主体性を尊重する必要があるのか。それは、運動部活動では、様々な体験を通して社会性や行動力等の育成が期待でき、日常的に自己選択や自己決定が求められることで自己実現の基礎を培うことができるからである。 果たして、実際の運動部活動では、生徒の主体性を重視した指導が行われているのか。そのような運動部活動は生徒から高く評価されているかを明らかにしようとした。 本研究では、運動部活動におけるチーム/個人の目標に対する意識と生徒の満足度に関する調査票を作成し、両者の関係を分析しようとした。対象は、中学校29校の運動部292部とその生徒4104名、高等学校23校の運動部249部とその生徒8048名であった。 その結果、より多くの生徒が楽しいと感じる上で、チームに明確な目標があり、その目標をすべての生徒が共有していること、またその目標設定にすべての生徒が関わっていることが重要であることが明らかであった。また生徒一人ひとりが自分の目標をもち、その達成に向けた具体的な計画と、達成に向けて日々努力できていると実感できることが重要であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、以下の2本を学術論文として投稿し、第1回目の審査結果が戻ってきた。両方とも「B」判定で、再投稿に向けて回答書を作成中である。 1)運動部活動の取り組みに関する形成的評価票作成の試み 形成的評価法は、日頃の運動部活動について評価や観察の視点が示され、練習内容や生徒への対応の仕方に関する改善ポイントが提示されるという利点がある。そこで、生徒にとって望ましい運動部活動の指導の在り方を明らかにするために、運動部活動やスポーツ指導に関する先行研究をふまえて運動部活動に関する形成的評価法を作成した。実際に運動部活動に取り組む中高生を対象に質問紙調査を行い、その回答結果について因子分析を行った結果、「指導者との充実したコミュニケーション」、「自主的・自発的な練習」、「友好的・愛好的態度」、「技能向上」の4因子が抽出され、それらは生徒が評価する運動部活動を分析し、理解する上で有効な観点になることが明らかとなった。 2)運動部活動におけるチーム/個人の目標に対する意識と生徒の満足度との関係 学習指導要領において、運動部活動では生徒の自主的・自発的な取り組みが強調されている。果たして、学校現場では生徒と意見交換を行い、彼らの意見を十分に反映させるような指導が行われているのか。また実際に、生徒の主体性を重視した運動部活動は生徒から高く評価されているかを明らかにしようとした。 本研究では、運動部活動におけるチーム/個人の目標に対する意識と生徒の満足度との関係を分析した結果、より多くの生徒が楽しいと感じる上で、チームに明確な目標があり、その目標をすべての生徒が共有していること、またその目標設定にすべての生徒が関わっていることが重要であることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
「運動部活動の取り組みに関する形成的評価票作成の試み」論文が掲載された後、次は本形成的評価票を用いて、運動部活動の指導者に着目し、指導者が考える運動部活動の進め方と生徒の形成的評価との関係について調査・分析する。具体的には、チームの目標に関する意志決定並びに共有化について、またチームの練習計画・内容並びに練習の進めかたについて指導者はどのように捉えているかを調査する。それらの調査結果と、各チームの生徒の運動部活動に関する形成的評価との対応関係を分析する。指導者の運動部活動の進め方について、具体的には次のような2つの調査票を用いる。 【チームの目標に関する意志決定ならびに共有化】1)チーム目標の決定者(a.指導者/b.指導者と一部の生徒/c.指導者とすべての生徒/d.すべての生徒)2)チーム目標の共有化(a.すべての生徒が共有/b.一部の生徒が共有していない/c.ほとんどの生徒が共有していない) 【練習計画・内容ならびに練習の進めかたに関する意志決定】3)練習計画・内容の決定者(a.指導者/b.指導者と一部の生徒/c. 指導者とすべての生徒/d. すべての生徒)4)練習の進めかた(a.指導者の直接的な指示や指導のもと練習に取り組む/b.これまでの練習で指導者が指導したやり方で、生徒たちが自主的に取り組む/c.指導者の用意した練習メニューを参考にして、生徒たちが練習内容を選択したり方法を工夫したりして自発的に取り組む/d.生徒が自分たちの問題解決に向けて練習の内容や方法を考え、自発的に取り組む) 予想される結果として、チームの目標並びに練習計画・内容並びに練習の進めかたでは、指導者とすべての生徒で決定し、生徒が自分たちで練習の内容や方法を考え、自発的に取り組む状況において、生徒の形成的評価が最も高くなると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に、全国の中学校・高等学校の運動部活動の顧問教師並びに生徒に対して実施した、チーム/個人の目標に対する意識と生徒の満足度に関する調査のデータ入力のために、人件費を計上していたが、結局、自分自身で入力したために、未使用額が生じた。また、追加で調査票を印刷、送付(通信費)することを計画していたが、計画を変更し、県教育委員会へのヒアリング調査を行うこととなったため、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
このため、平成28年度は、引き続き県教育委員会と、各学校の運動部活動顧問に対して、運動部活動の運営の仕方に関するヒアリング調査の実施とその分析、さらにはそれらを論文にまとめ、学会発表を行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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