研究課題/領域番号 |
15K01580
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研究機関 | 広島国際大学 |
研究代表者 |
加藤 茂幸 広島国際大学, 総合リハビリテーション学部, 准教授 (20368715)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 前十字靭帯 / 有限要素法 / 膝関節 / スポーツ / 外傷 / 受傷機転 |
研究実績の概要 |
本研究は、膝関節のMR画像から関節内の骨形状および靱帯、半月板などを3次元的に構築し、それを動的にシミュレーションすることで、靭帯損傷や半月板損傷等の外傷発生時の関節内の状況を可視化することを目的とする。初年度は、効率的な有限要素モデルの構築手法を築きつつ、動的シミュレーションの手法において、非線形解析およびダイナミック解析手法の確立を実施した。DICOMデータから画像解析ソフトOsiriXおよびZedView、3Dモデリングソフトによってコンピュータ上に3次元の立体膝モデルを構築し、非線形構造解析プログラムMSC.Marcにてコンピュータシミュレーションを行った。関節の角速度を反映した解析により靭帯自体に高いストレスが加わることがこの膝モデルにて示唆された。 そして、2016年度はこの手法を様々なスポーツの受傷場面に当てはめ実行することを試みた。バスケットボール競技ではジャンプ着地やカッティング動作にて外傷受傷することが多い。つまり、床面に足部が着いた状態での受傷である。それに対して、スキー競技では滑走中にスキー板のエッジが斜面に食い込み下腿部が急速に動くことで受傷する。よって、スキー競技の受傷場面のシミュレーション解析においては、大腿骨を固定し脛骨を移動させることによって靭帯に加わる応力を算出した。脛骨内旋、膝外反、脛骨前方移動させたとき、靭帯の大腿骨付着部、および靭帯の下1/3部に高い応力が認められた(50MPa~80MPa, MPa = N/mm2 = kgf/mm2)。また、その際、靭帯の下1/3部と大腿骨顆間窩との衝突がみられた。今後は他の競技の受傷場面を反映させた解析を進めてゆくことでスポーツ外傷発生時の関節内の状況を可視化してゆく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、膝関節のMR画像から関節内の骨形状および靱帯、半月板などを3次元的に構築し、それを動的にシミュレーションすることで靭帯損傷や半月板損傷等の外傷発生時の関節内の状況を可視化することを目的とする。初年度は、効率的な有限要素モデルの構築手法を築きつつ、解析の精度を上げるために動的シミュレーションの手法において非線形解析およびダイナミック解析手法の確立を実施した。2016年度は、様々なスポーツのなかでスキー競技での受傷場面を反映させたシミュレーションを実行するために、大腿骨を固定し脛骨を移動させるようにモデルの設定を工夫した。それによって、バスケットボール競技のジャンプ着地のような受傷パターンのみならず、スキー競技での下腿部が急速に動くことによる受傷パターンにも対応できるようになった。次年度以降は、内側々副靭帯や半月板等のモデル構築の検討を進めてゆく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度と同様、次年度においてもモデルの構築および解析を実施するうえで工学的専門家(岡山県工業技術センター)の助言を得ながら進めてゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はソフトウェアに関する支出は、解析ソフトウェアMarc (MSC)の年間サポート保守費用のみで、画像解析ソフトウェアZedView (レキシー)はアップデートを行う必要がなかった。次年度は各ソフトウェアのアップデートに対応するための費用を計上する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
解析ソフトウェアMarc (MSC)、および画像解析ソフトウェアZedView (レキシー)のそれぞれのソフトウェアアップデートに対応するための保守費用を計上した。また、工学的解析手法および結果解釈等の打合せに岡山工業技術センターまでの往復交通費を計上している。高度な専門知識を要する立体膝モデルデータを組み上げる作業においては、岡山工業技術センターからの助言および、必要に応じて解析ソフトの専門家からの助言を得る。加えて、膝モデルデータを組み上げる作業において工学的専門計算解析費用を計上している。また、ここまでの研究成果を公表および発表するため国内・国外旅費を計上している。
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