研究課題/領域番号 |
15K01586
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
真田 久 筑波大学, 体育系, 教授 (30154123)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | オリンピック教育 / マナー / ホスピタリティ / リオデジャネイロ / おもてなし / オリンピックの価値 |
研究実績の概要 |
リオデジャネイロにて第31回オリンピック競技大会の直前に開催されたIOCオリンピック研究センターの国際会議にて、組織委員会でオリンピック教育を担当している関係者から直接話を聞くことができた。リオ大会の教育プログラムでは、「トランスフォルマ」(改革)というプログラムが広く多くの学校に行われていたが、大会期間中のプログラムとしては、予算の不足から、生徒の交流活動などは限定的に行われていた。このプログラムの中には、IOCの掲げるオリンピックの価値、卓越性、友情、敬意・尊重の3つが中心であった。マナーやホスピタリティについては特に言及されたものはなかった。 一方、ボランティアの育成については、実際のボランティアに対して聞き取り調査を行った。その結果、ホスピタリティについての教育は、困っている人に対して、親切に接することが強調されていたが、それ以上のものはなかった。またマナーについては、特に強調されたものはなく、ボランティアについては、予算の逼迫から十分な人数の確保ができなかったということが分かった。 日本においては、東京都の公立学校2300校全てで行われたオリンピック・パラリンピック教育について、育成すべき5つの資質、「ボランティアマインド」「障害者理解」「スポーツ志向」「日本人としての自覚と誇り」「豊かな国際感覚」のうち、その中の「ボランティアマインド」「日本人としての自覚と誇り」には、おもてなしの心やマナーについて言及されていた。 また、スポーツ庁の委託事業「オリンピック・パラリンピックムーブメント全国展開事業」では、「おもてなし精神を備えた大会ボランティアおよび都市ボランティア等の養成」が5つのテーマの中に入っているように、日本においての教育プログラムには、マナーやおもてなしについての内容が盛り込まれ、各学校でも積極的に学習されていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、オリンピック競技大会の開催地におけるマナーやホスピタリティ教育の内容について明らかにすることと、それに基づいて2020年におけるマナーやホスピタリティ教育の内容について検討することが目的である。現在のところ、ロンドン大会(2012年)、ソチ冬季大会(2014年)、そしてリオデジャネイロ大会(2016年)の3大会の教育プログラムについて検討してきた。その結果、ロンドンやソチのホスピタリティ教育は、ホテルのシェフや関係者などから、専門的に行われていたことが明らかになった。 一方、日本におけるオリンピック・パラリンピック教育の内容は、東京都やスポーツ庁が推進しているが、それらの中には、ボランティアの育成の中で、マナーやホスピタリティ教育が論じられており、おもてなしの心という表現が使われている。 このように、日本的な概念であるおもてなしをホスピタリティと対比させて分析することが、今後必要であるといえ、そのような方向性が見えてきたことは、一定の成果であるといえよう。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は平昌で冬季オリンピック・パラリンピック競技大会が開催される。同じ東アジア文化圏での開催なので、そこでどのようなマナー教育が行われるのかについて、情報を早めに収集する。その一方で、東京都やスポーツ庁によって推進されているオリンピック・パラリンピック教育の中で、マナー教育について、どのような内容でどのように行われているのかを調査し、それらの成果についても検討していく。海外でのマナーやホスピタリティ教育と国内での教育プログラムを比較しながら、より良いマナー教育の内容を構築する資料を作成する。また国際オリンピック委員会で推進しているオリンピズムの価値に関する教育プログラム(OVEP)の中で、マナー教育についてどのように取り上げられているかを調査する。それらを通して、今後のオリンピック、パラリンピック競技大会の開催地におけるマナー教育のあり方についてまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
ブラジルにおけるマナー教育についての資料整理および分析要員の雇用を予定していたが、適当な人物を手配できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
29年度においては、平昌や東京都、スポーツ庁などにより推進されているマナー教育に関する資料収集および分析のための雇用経費として使用を予定している。
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