平成29年度は、アジア地域(日本、中国、韓国)におけるYMCAの「体育・スポーツ事業」の比較分析、ならびに研究全般の総括であった。アジア地域におけるYMCAの「体育・スポーツ事業」の比較分析においては、分析視点の一つである1910年から1930年までの日本、中国、韓国で活動したアメリカ人体育主事、アメリカYMCAに留学した日本人体育主事に関連する資料を整理、分析した。その結果を「戦前期の東北アジア地域におけるYMCA体育・スポーツ事業に関する研究」東北アジア・体育スポーツ史学会第12回大会、2017年7月4-7日、浙江省金華市浙江師範大学国際交流センター(中華人民共和国)にて発表することができた。しかし、ここで提示されたものがすべてではないため、今後さらに資料を補完されていく必要がある。 また、平成29年度は、研究期間の最終年度であり、その総括として日本におけるYMCAの「体育・スポーツ事業」の普及、展開過程における特徴と独自性を明らかにすることを中心に研究を行った。この研究課題を追及する上では各地で展開された「体育・スポーツ事業」に影響を与えた社会的背景を加味して総合的に分析する必要がある。この分析を通してアメリカYMCAがアジア地域で展開した「体育・スポーツ事業」に関する思想と制度を明らかにし、アメリカYMCAが世界各地で展開した「体育・スポーツ事業」を考察する上での好個な資料を提供し得ると考える。日本YMCA「体育・スポーツ事業」の特徴としては、日本各地の社会体育・スポーツの推進母体の一つであったこと。会員に対して天候などに左右されない定期的なスポーツ活動の「場」を屋内スポーツ施設(体育館)を設置することで提供したこと。新規スポーツ種目を周知させ普及させるために指導者を育成し、大会の開催や組織の設立に主導的に関わていたことが明らかになった。
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